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未来を拓くための技術PROJECT STORY_05

船舶情報管理システム開発プロジェクト

世界の海を航海する船舶の安全・安心に、
ソフトウェアのスペシャリストとして貢献する。

PROLOGUE

船舶情報管理システム開発プロジェクト

エネルギーの安定供給をはじめ、日本の物流は大型タンカーなど多数の船舶による海上運送が担っている。船舶の安全・安心な航行のために求められる定期的な保守運用を支えているのが、三菱電機ソフトウエアが手がける「船舶情報管理システム」だ。今も機能追加・改修が続くこのシステムは、日本の海運業界を支える使命を持つとともに、三菱電機グループ以外の“自主事業”という点で当社の事業展開においても意義深いプロジェクトだ。このプロジェクトに携わるやりがいや醍醐味とはどのようなものか?主要メンバー2名に話を聞いた。

MEMBER

  • プロジェクトリーダー Y.S

    プロジェクトリーダー

    Y.S
    湘南事業所 ITシステム第三部
    2001年入社
    工学部 電気電子工学科卒

  • プロジェクトメンバー H.S

    プロジェクトメンバー

    H.S
    湘南事業所 ITシステム第三部
    2006年入社
    工学部 コンピュータメディア工学科卒

STORY

─本プロジェクトの背景について教えてください。

Y.S:
船舶の安全・確実な航行を支援する「船舶情報管理システム」の機能追加・改修などを我々のチームで担当しています。ユーザーは船主や海運会社、船舶の乗組員で、我々の直接のお客様は船舶のライフサイクルに関するグローバルなサービスを提供している企業です。
H.S:
三菱電機グループ向けのプロジェクトが多い当社において数少ない“自主事業”の1つで、今後当社はグループ外案件の受託にも力を入れていく方針です。
Y.S:
そもそもこの「船舶情報管理システム」の開発は、別のITベンダーが手がけていたのですが、当社の技術力や対応力、知見が高く評価され切り替えてくださった経緯があります。
H.S:
従来の「船舶情報管理システム」は十分に安定稼働ができておりませんでした。そこで当社がシステム保守運用のサポートをすることになり、改善などの運用を行う中でお客様から「システム全体の仕様を把握して、今後の機能追加や改修なども引き受けてもらえないか」と声がかかったんですよね。
Y.S:
品質に対しては特に厳格に取り組むことが我々の基本的なスタンスです。もちろんシステム開発にはスピードも重要ですが、どれだけ早く開発したとしても不安定なシステムであっては意味がありません。ましてや船舶の航行を支援するという場合によっては乗組員の安全に関わってくる重要なシステムにおいて、品質は極めて重要です。開発はもちろんテスト・検証まで拙速であってはならないと当社は考えています。
H.S:
三菱電機ソフトウエアという社名にも表れているように、当社はソフトウェアのスペシャリストが集まった会社です。さまざまな業界の業務知識、技術に対して深い知見を持った技術者がそろっており、こうした点もお客様に高く評価されたのではないでしょうか。

─お2人は本プロジェクトにどのように携われたのでしょうか。

Y.S:
このプロジェクトの話を聞いたとき、私は三菱電機の「情報技術総合研究所」でAIやXRといった先端技術の研究に取り組んでいました。ですから最初に感じたのは「今までやったことがない仕事だ」というワクワク感でしたね。先ほども出たように当社では自主事業は少なく、私も三菱電機グループのための研究を行っていたので、グループ外のお客様の仕事がとても新鮮だったのです。率直に「楽しそうだな」と思いました。
H.S:
船舶は未知の領域だったと思いますが、不安はありませんでしたか。
Y.S:
まったくなかったですね。私は新しいもの好きで、未知だからこそ面白いと思うタイプなんです。
H.S:
実は私も同じでした。最初はY.Sさんが1人でこのプロジェクトを担当されていて、「ちょっと手伝ってほしい」と声をかけていただいたことがきっかけで参画するようになりました。未知の仕事に携われることは楽しみでしたし、新たな気持ちでチャレンジできると思いました。
Y.S:
私はけっこうずぼらなところがあるのですが、H.Sさんは仕事が丁寧で、とてもきっちりされています。そんな仕事ぶりを以前から知っていたので、必ず力になってくれると思っていました。新しいことを面白がる点も素晴らしいです。
H.S:
どんなことでも、まずやってみようと思うたちなんです。
Y.S:
もちろんいざ取り組んでみたら、容易にはいかない面も多かったです。例えば言葉です。船舶について私はまったく知識が無かったため、いわゆる業界用語がまるで理解できず、苦労しました。略語が多くて、しかも海運会社によってその意味が違ったり。
H.S:
システムの仕様を把握するのも大変だったのでは?
Y.S:
ええ。とにかくソースが膨大で、トータルで100KL(10万行)以上もありました。それを読み込んで理解するだけでも、大変な作業でした。
H.S:
その段階で私はまだプロジェクトには参画しておらず、Y.Sさんが何か新しいことに挑戦しているみたいだな”と興味津々でした。だから「手伝ってほしい」と声がかかったときは嬉しかったです。

─プロジェクトの具体的な内容について教えてください。

Y.S:
「船舶情報管理システム」はいくつかのサブシステムで構成されており、その中で我々が機能追加などを手がけているのは「保守管理システム」「予備品管理システム」「アブログ管理システム」の3つです。
H.S:
「保守管理システム」は文字通り船舶の保守管理状況を管理するシステムで、点検や故障などの記録を取るものです。この記録は公的な機関に提出することが義務づけられており、車検証がないとクルマが走れないように、万一記録に不備があると航行は許可されません。その意味で非常に重要なシステムです。
Y.S:
「予備品管理システム」は、船舶の修理に必要な部品がいくつ積まれているかを確認し、部品が不足したらメーカーに発注するシステムです。
H.S:
「アブログ管理システム」は、いわゆる航海日誌のようなものです。出発地や現在地、航海距離、気象、燃料の残量などの情報を入力すると必要な帳票を作成してくれるシステムです。従来は人が計算し、記録していましたが、このシステムによって大幅な省力化ができました。
Y.S:
これらのシステムを総称して「船舶情報管理システム」と呼んでいます。
H.S:
これらのシステムに対してユーザーである海運会社や船主から「こんな機能を追加してほしい」「ここの使い勝手を改善してほしい」などの要求が寄せられ、それに応えて私たちが機能追加や改修の対応を行っています。その際は私たちが窓口として要件を伺い、チームメンバーに割り振っていきます。
Y.S:
「船舶情報管理システム」のデータは船舶と地上で同期できるようになっていますが、これまではメールでのやりとりが基本でした。そのためメールの紛失やデータの取り込みミスといったヒューマンエラーが避けられません。そこでメールソフトを開かなくてもワンクリックで同期できるように改良しました。
H.S:
画面に表示されるボタンが多すぎて“初めてだとどれを押したらいいかわからない”と声をいただいたこともありました。機能追加時は、分かりやすさを常に意識して改修を行っています。
Y.S:
船舶関連の学校の授業で使いたいとのご相談もありましたね。
H.S:
そうそう。将来の船乗りさんたちを育てるために、実際に「船舶情報管理システム」を生徒さんに使ってもらうとのことでした。こんなふうに使われることもあるんだと、ちょっと驚いたものでした。海運業界の人材育成に貢献できるなんて、嬉しかったです。

─仕事のやりがいはいかがですか。

Y.S:
私がプロジェクトのリーダーになっていますが、実際は上下なく、お互いにリスペクトしながらそれぞれの責任で開発を進めています。2人ともプレーイングマネージャーに近い感じです。私はモノづくりが大好きで、マネジメント業務だけだと物足りなく感じるタイプですから、こうした働き方は大歓迎です。
H.S:
設計からテストまで、つまりシステム開発の上流から下流まで1人でトータルに対応できる点が面白みですね。
Y.S:
関連する別システムではあるんですが、我々が手掛けた航路情報の支援システムはとても意義深く感じました。これは気象データや海の状態などのデータをもとにして、最も効率よく走れる航路、つまり最も燃費のよい航路を示してくれるシステムです。海運業界では2028年までに温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション船」の商業運航を目指していますが、そうした取り組みに貢献できると考えています。
H.S:
人手不足も大きな問題ですから、「船舶情報管理システム」が省力化・自動化につながっていることもやりがいに感じます。
Y.S:
私が印象に残っているのは、「船舶情報管理システム」に新しい機能を追加した際、セッティングに立ち会うために造船所を訪れてタンカーに乗り込んだことでした。全長200メートルもあるタンカーで、そのスケールには圧倒されました。
H.S:
船にはちゃんとサーバー室なども設置されているんですよね。
Y.S:
エンジンルームなどはまさに鉄の空間で、電波はまったく届きません。そんな環境でもタブレットが使えるようにするにはどうしたらいいかなど、現場の状況をリアルに感じることができました。船員のITリテラシーもさまざまなので、誰でも簡単に操作できるようにしなくてはなりません。SEとしてユーザーの環境を肌で感じることの大切さを、改めて学ぶことができました。
H.S:
石油タンカーなど大型の船舶で「船舶情報管理システム」はよく利用されています。
Y.S:
日本のエネルギーの安定供給に貢献していることは間違いないですね。この点も誇らしく感じています。

―今後の目標について教えてください。

H.S:
先ほど「ゼロエミッション船」について触れましたが、温室効果ガス抑制への本格的な取り組みはこれからで、現状はそのためのデータを蓄積している段階です。今後はデータを活用した新しい取り組みについて提案していきたいと考えています。
Y.S:
人手不足についても、船員さんは今後どんどん減っていくことが予想されますので、船舶の航行そのものを自動化する取り組みも視野に入れたいと思います。
H.S:
仕事の上での目標としては、お客様に対して自ら提案する力を磨いていきたいと考えています。これまではお客様から要請を受け、それに応える形で仕事を進めてきました。今後は私たちの技術力やデータを活用することで、こんな機能が可能になるとお客様に提案し、案件化していくことに挑戦します。せっかく自主事業に取り組んでいるので、ビジネスとしての可能性をさらに広げられたらと思います。
Y.S:
未知の世界だった船舶の領域ですが、こうして取り組んでみるとその可能性の広がりに驚かされます。例えばドローンを使って船舶の点検をしたり、AIによって一層の自動化を進めたりと、テクノロジーとの親和性の高さを感じます。お客様のニーズに耳を傾けつつ、積極的に新しいテーマにチャレンジしていきたいですね。そのためにも社内のスペシャリストと交流し、船舶の領域に応用できそうな技術の吸収に取り組んでいきます。