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未来を拓くための技術PROJECT STORY_01

衛星利用情報システム開発プロジェクト

部署や事業所の壁を越えた総力戦で
過去に例のない大規模システム開発へ挑む。

PROLOGUE

衛星利用情報システム開発プロジェクト

擁するストレージ容量は実に16PB(ペタバイト)。事業所内の各部署はもとより、他事業所をも巻き込んで4年もの歳月をかけて行うシステム開発。そんな異例とも言えるほどの巨大プロジェクトが、衛星利用情報システム「A4EICS」開発プロジェクトだ。二つの人工衛星を対象とした観測要求の受付や管理、観測データの保存や配信を行う本システムは、資源探査や地図作成だけでなく、大雨による土砂災害や洪水、火山の噴火など災害時の状況把握などさまざまな分野での活用が予定されており、担う使命も極めて大きい。重要度も難易度も並外れた本プロジェクトに、メンバーたちはいかにして立ち向かったのか。

MEMBER

  • プロジェクトマネージャー G.I

    プロジェクトマネージャー

    G.I
    つくば事業所 第二技術部
    2006年入社
    理工学研究科 航空宇宙工学専攻修了

  • サブシステムリーダー K.M

    サブシステムリーダー

    K.M
    つくば事業所 第二技術部
    2010年入社
    工学研究科 電気・電子工学専攻修了

  • ソフトウェアエンジニア K.S

    ソフトウェアエンジニア

    K.S
    つくば事業所 第二技術部
    2018年入社
    教養学部 情報科学科卒

STORY

─まずは、本プロジェクトの概要をお伺いできますか。

G.I:
概要からお伝えすると本プロジェクトは、現在運用中の陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)と今後打ち上げ予定の先進レーダ衛星(ALOS-4)の二つの地球観測衛星を対象とした観測要求の受付や管理、衛星が取得した観測データの保存や配信を行う地上システムの開発になります。
K.M:
扱う衛星の画像データは膨大で、16PBもの超巨大ストレージが必要となります。開発規模も、そして衛星活用が持つ影響力の大きさから見ても、つくば事業所として類を見ない大規模プロジェクトと言っていいのではないかと思います。
K.S:
本プロジェクトが始動したのが2017年12月。私は2018年入社なので、発足当初はまだ入社していなかったのですが、私がアサインされた時点でもつくば事業所内の各部署だけでなく、鎌倉事業所の力も借りながらプロジェクトを進めており、プロジェクトの大きさや難易度、期待値の高さは新人ながら相当なものなのだろうと感じていました。

─それほど大きなプロジェクトを、どのような経緯で担当することになったのでしょうか。

G.I:
先ほどお話ししたようなシステム開発の公告に当社が入札し、無事受注することでスタートしました。
K.M:
ただ、受注するまでの道のりも決して簡単ではなかったと聞いています。私たちが所属するつくば事業所第二技術部内にはこれほど大規模なシステムやWebアプリケーションの構築に関する知見は少なかったため、K.Sさんが話してくれたように部署や事業所を横断したチームを組織する必要がありました。
G.I:
加えて、当然予算上の制約もある上、システムの規模も尋常ではありません。まさに三菱電機ソフトウエアの総力を結集して、なんとか受注までこぎつけました。

─苦労の末に受注されて、いざプロジェクトが始動する際の心境や意気込みをお伺いできますか。

G.I:
これほどの規模のプロジェクトに、しかもプロジェクトマネージャーとして関われることにワクワクしました。ただ、冷静になるにつれて、責任の重さを感じて不安が大きくなっていきました。
K.M:
私も不安はありましたが、同時に当社を代表して向き合わねばと使命も感じていました。本システムの対象となる衛星は二つとも三菱電機(株)が開発したもの。三菱電機グループとしての繋がりを活かしながら、ユーザーと衛星の架け橋となれるのは当社しかいないんだと自負を持って臨みました。
K.S:
私はアサインされた時の心境になりますが、周囲の先輩方や上司から「入社1年目からこんな大きなプロジェクトに、設計の段階から関われるなんてなかなかないぞ」と言われていたこともあって、楽しさや嬉しさが大きかったですね、今考えると、経験がなさすぎてG.IさんやK.Mさんほど、このプロジェクトがどれだけ大変か想像できていなかったんだと思います。

─そんな各々の決意と覚悟のもと、どのようなフローで納品まで進めていかれたのでしょうか。

G.I:
約4年にわたる長期プロジェクトなので、数え切れないほどの工程を経ての納品でしたが、大まかに分けると3つのステップを踏みました。まず初めに行ったのが、要求分析。そして要求をもとに4つのサブシステムに分けての設計及びソフトウェア製作。最後にそれぞれのサブシステムの結合の流れになります。私はプロジェクトマネージャーとして、各工程の全体統括や先方への提案や調整を担っていました。
K.M:
私は、4つのサブシステムのうち、観測要求を基に外部システムと連携して観測計画を立案する計画サブシステムのサブリーダーを務めました。過去に衛星運用計画を立案する地上システムの開発を経験していたため、当時の経験を活かせば順調に進められると思っていましたが、そう簡単にはいきませんでしたね。その上、途中からソフトウェア開発に関する環境や方針を取りまとめるアーキテクチャ担当になり、必死に奔走しながら走り抜いた感覚です。
K.S:
私が配属されたのは外部システムとのインターフェースとユーザー情報などを管理する運用管理サブシステム。中でも、ユーザーやシステム運用者が実際に触る画面設計を担当しました。特に画面は本システムの利便性に直結するため、見やすさ、使いやすさ、そして分かりやすさを考慮しながら設計しましたが、経験が浅いこともあり実装担当者から「これではどんな実装をすればいいのかわからない」と厳しいレビューをいただくこともしばしば。素直にわからないことはわからないと認め、相談しながら着実に前進させられるよう夢中でした。

─ここまででも苦労が伝わってきますが、特に難しかったのはどの部分でしょうか。

G.I:
三つのステップの最後の部分、サブシステムを結合する部分ですね。効率を重視して、四つのサブシステムに分けて作業を進めていましたが、それぞれの連結部分でどのような形でデータを受け渡しするかの想定や共有が十分ではなく、結合試験は難航を極めました。
K.M:
特にG.Iさんは本当に苦労されていました。あらゆるケースを想定して、どのような状況でもエラーが起きないよう試験を行うのですが、その試験シナリオを400ケースは用意されていたと思います。
G.I:
そのくらいは作った記憶がありますね。さらに、試験を行うためには地上システムだけでなく、データのやりとりを行う幾つもの対向システムの模擬システムも作成しなければいけません。また、並行して、起きたエラーの対策も行う必要があります。もう、やるしかないの一心でしたね。
K.S:
そんな中でもG.Iさんはプロジェクトチームの雰囲気を明るく保つように振る舞っていて、本当にすごいと思いましたし、感謝しています。いつも笑顔で明るかっただけでなく、当時放送されていたドラマに合わせて、ミーティングに「桶狭間会議」と名付けたりして、厳しい中でもユーモアある空気の中で仕事を楽しめていました。
K.M:
私の周りの社員の方達からも「このプロジェクトはG.Iさんがプロジェクトマネージャーだから成功できた」との声がたくさん上がっていましたし、これ以上ないほど心強かったです。
G.I:
私としては、むしろプロジェクトメンバーの皆さんに心から感謝しています。スケジュール変更は一度や二度ではなかったですし、試験の結果、作業を一からやり直しするケースも少なくなかった。そんな中でも嫌な顔一つせずついてきてくれたからこそ乗り越えられたと確信しています。

─多くの苦労を乗り越え無事納品された中で、最も達成感を覚えたのはどの瞬間でしょうか。

G.I:
サブシステムを結合しても問題ないとわかった時ですね。なんといっても、やはり結合試験がハードでしたから。結合試験を終えた後のチェックを行うソフトウェア適格性試験の終わりが見えた時は、これまでに感じたことのないほどの安堵感がありました。
K.M:
終わりが見えない作業を続けてきたこともあって「本当にこれで終わりなの?」と信じられないような気持ちでした。
K.S:
私も、無事に結合試験が完了した際には達成感を覚えました。ただ、個人的には地味かもしれませんが、実装担当者の方とスムーズなやりとりができるようになったときが一番嬉しかったです。指示もまともに出せない現状を歯がゆく感じていた分、フィードバックを丁寧に咀嚼しながら理解を深め、自分の言葉で伝えられるようになったときに、ようやく一人前になれた、会社からの期待に少しは応えられた達成感がありました。
G.I:
期待に応えた実感が得られたときの喜びは大きいですよね。お二人は参加していませんが、最終的にシステムに問題がないかをお客様と確認する開発完了審査会があり、そこで「最初に発注した際は、正直なところ不安もありました。でも、三菱電機ソフトウエアさんの底力を見せてもらいました。本当にありがとう」との言葉を先方のプロジェクトマネージャーからもらったんです。あのときは痺れましたね。

─感慨深い納品を終えて現在は運用に向けた準備を進めているとのことですが、今後の展望をお聞かせください。

G.I:
システムの納品はしましたが稼働はまだ先になるので、ユーザーの目に触れる瞬間が待ち遠しいですね。苦労を重ねた分、システムに対しては絶対の自信があります。ユーザーやシステム運用者に使用してもらい「こんなに使いやすくなったのか」「まさに、こういうことがやりたかったんだ」といった声がもらえる未来を今から楽しみにしています。
K.M:
このプロジェクトとしては、G.Iさんと同じく早く稼働を迎えたい気持ちです。納品ではなく、システムが問題なく稼働するところまでが私たちの使命だと思っているので。加えて、大規模システム開発の経験をつくば事業所や会社の知見として蓄積できればと思っています。うまくいった部分はもちろん、失敗に関してもなぜ失敗したのか、どうすれば回避できたのかをしっかりと内省して会社に還元していきたいです。
K.S:
私はこのプロジェクトが初めてアサインされた案件になるので、ここで得た学びを次のプロジェクトで早く活かしたいとうずうずしています。衛星が変わればインターフェースも情報管理の方法も異なるため、今回の経験をそのまま活かせるわけではないと思います。それでも、活かせる知識は決して少なくないと思いますし、通用しない部分は新しい知識が得られる部分ということ。諦めずに前を向き続ければ、必ずゴールに辿り着けると本プロジェクトで学んだので、どんな案件もポジティブに楽しみながら向き合っていけたらと思います。