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未来を拓くための技術PROJECT STORY_03

電力系統監視制御システムの構築・開発プロジェクト

“安心して電気が使える”、
そんな当たり前の日常に貢献する

PROLOGUE

電力系統監視制御システムの構築・開発プロジェクト

24時間365日、誰もが当たり前のように電気を使っている。この当たり前の電力供給を支えているのが、三菱電機ソフトウエアのシステムエンジニアたち。電力自由化などの大きな変化の中、電力システムの進化に貢献してきた。「この街に明日も明かりが灯るように」との思いが、その原動力となっている。

MEMBER

  • システムエンジニア T.K

    システムエンジニア

    T.K
    神戸事業所 技術第5部
    2013年入社
    理工学研究科 電子デバイス工学専攻修了

  • システムエンジニア T.T

    システムエンジニア

    T.T
    神戸事業所 技術第5部
    2016年入社
    工学研究科 情報・メディア工学専攻修了

  • システムエンジニア A.C

    システムエンジニア

    A.C
    神戸事業所 技術第5部
    2017年入社
    電気情報システム工学専攻修了

STORY

─本プロジェクトの概要について教えてください。

T.K:
電力自由化の流れや再生可能エネルギーの普及などを受け、電力産業を取り巻く環境は劇的に変化しています。それに伴って電力システムも段階的に改革されてきました。こうした大きな流れの中、ある電力会社様の送電部分を担う拠点集約型監視制御システム構築に向けてスタートしたのが今回のプロジェクトです。
A.C:
該当エリアにおいてはこれまで各県に1台ずつ、合計8台の監視制御用のサーバが設置されていました。今回のプロジェクトはその8台のサーバを一つに集約しようとするものでした。さらにバックアップ用のサーバを物理的に遠く離れた場所に配置することで、自然災害等による運用への影響を最小化することも目的としています。
T.T:
8台のサーバがあるということは、8台分のシステムやハードがあり、運用や保守管理のために8台分の人力が必要ということです。サーバを1台に集約することでこれらのコストは省くことができ大幅なコストダウンにつながります。
T.K:
BCP対策を目的としたバックアップサーバの設置により、電力の安定供給にも貢献できます。その点で社会的意義のあるプロジェクトとなります。
A.C:
最初にプロジェクトにアサインされたのはT.Kさんでしたね。私が入社する前のことでした。
T.K:
入社3年目のことでした。システムエンジニアとしての経験は浅かったものの、同様のプロジェクトに携わったことがあったので特に不安はありませんでした。非常にスケールの大きなプロジェクトであり、「絶対に成功させてやる」との思いが強かったです。
T.T:
私は新入社員として参画したため、正直なところ期待よりも不安の方が大きかったです。こんなに大きなシステムの構築が、果たして自分たちにできるだろうかと心配でした。
A.C:
私は新入社員研修を終えてすぐにアサインされたこともあり、プロジェクトの全体像も把握できないまま、とりあえず走り出さなきゃとの気持ちでした。ひたすらがむしゃらに取り組んだ記憶があります。

─それぞれの役割について教えてください。

T.K:
私は、現地機器に対して制御を行う操作機能を担当しました。この機能は非常に重要なものであり、初めて業務リーダーを務めることになったプロジェクトでもあったので、システムエンジニアとして大きな飛躍ができるチャンスだと思いました。
T.T:
私はデータベースのインターフェース機能を担当しました。監視機能や操作機能などを正確に動作させるために欠かせない設備情報の処理と提供を担う縁の下の力持ちのようなものです。
A.C:
私が担当したのはミドルウエアでした。監視制御を実施する各種アプリケーションの土台となるソフトウェアを製作しました。
T.T:
本プロジェクトに参画して概要を知った際に真っ先に思ったことが「8台のサーバを1台に集約するなんて!」ということでした。思わず先輩に「こんなことが本当にできるんですか」と質問したのを覚えています。先輩の答えは「なんとかして実現するんだよ」というものでした(笑)。とにかくゴールに向けて一つひとつ、着実に積み上げていくぞと覚悟を決めました。
A.C:
ミドルウエアについては、私がプロジェクトに参画した時点で既にベースはできていました。ウォーターフォール型で開発するにはシステム規模が大きすぎるため、二段階に分かれて進めることになりました。私が参画した頃は開発の前半がほぼ終了し、お客様側での確認試験が始まっていました。先輩たちがその試験で見つかった問題の修正作業に追われている傍らで、私の担当作業が動き出しました。
T.K:
途中から参画したわけだから、プロジェクトの全貌を理解して追いつくのに苦労したのでは?
A.C:
はい、そうでした。さらにミドルウエアの開発には、プロジェクトの全体像を把握することに加えて、OSやネットワーク、プログラミングと幅広い知識が必要です。私は学生時代に情報工学を専攻していたため、その知識や経験を活かしながら取組みました。

─プロジェクトで印象的だったことは何でしたか。

A.C:
私が最初に担当したタスクは、ユーザー情報を提供するための関数を製作することでした。プログラムとしてはシンプルで、さほど苦労せずに終えられると思いましたが、実際には一カ月もかかることになりました。理由は、品質管理を目的に定められた開発基準を学びながら進めたためでした。これは自分たちの開発したシステムがどのような手順で製作され、要求される仕様を満たしているかをお客様に保証するための基準で、この基準に規定されたプロセスに則った形で製作するために時間がかかったのです。学生時代は自分の好きなようにプログラミングすればよかったのですが、仕事となったらそんな甘えは許されないと改めて痛感しました。
T.T:
その厳格さは、社会インフラを支えるシステムに携わるシステムエンジニアにとっての宿命だと思っています。もし我々の開発したプログラムに少しでも不具合があったら、大規模な停電が発生しかねません。24時間365日、何のトラブルもなく稼働し続けて当たり前のシステムに携わっているんです。社会の当たり前を当たり前のように支える責任があります。
A.C:
たった一行のプログラムを間違えただけでも何万世帯も停電することになりかねない、そんな怖さはありますよね。ただ私は社会インフラを支える仕事がしたいということが一番の入社動機でしたから、その責任の重さこそがやりがいにつながっているのは間違いありません。
T.K:
私も同じです。電力がどのように需要家や一般家庭に届けられているかを示す「電力系統図」というものがあります。図の中ではシンプルな図形で表現されている一つひとつの施設や設備が実際に果たす役割、影響範囲の大きさを思うと、身が引き締まる思いがしたものです。
T.T:
私が印象に残っているのは、電力系統に対する計算処理機能の改造です。計算処理そのものは20年以上も前に実装されたもので、改造前にその膨大なコードの意味をひも解くことから始めなければなりませんでした。コードを1行1行丁寧に読み解きながら、作業を進めていきました。
T.K:
とにかく誰もが勉強しながら同時に作業も進めていかなくてはならない状況でしたね。

─特にハードルの高さを感じたことはありましたか。

A.C:
情報工学の専門家でありながら、電気や機械の知識も求められたのは大変でした。
T.T:
上流から下流までトータルに取り組んでいるからこそ、お客様である電力会社のシステムエンジニアと直接折衝するための知識が必要なのですよね。お客様と力を合わせ、時には頼りにされていることを実感しながら進めていきました。
T.K:
私が担当した操作機能では、お客様の要望をどのように実現するかを検討することに苦労しました。例えば、この要望をお客様に言われた通りに実装した場合、実はシステムの別の個所に影響が生じ、現場の電線に過度な負荷がかかってしまうといった事態を生じさせかねません。お客様は電気のプロですが、システムの詳細までは把握されていない場合があります。お客様の要望をさまざまな面から紐解いていき、システムとしてあるべき姿にしていくことが肝心です。要望、要求、要件、仕様という表現をすることがありますが、お客様の実現したいこと(「要望」)をシステムに対する「要求」として整理し、「要件」に落とし込み具体的な「仕様」にまとめていく、これが私たちの仕事です。
T.T:
他にも地域ごとの特性の違いにも苦労しましたね。
A.C:
電力の供給には長い歴史があり、その過程で地域独特の事情に合わせて細かく仕様が変わっていきました。8台のサーバを1台に統合するには、そうした細かな違いにも配慮する必要がありました。
T.K:
出荷前日のトラブルも印象深いですね。
A.C:
システムを実装したサーバが工場から出荷される前日になって想定外の不具合が見つかりました。あのときは青ざめましたね。急遽修正を加えたソフトを入れ替えるなど対応に追われました。出荷して終わりではなく、安定して稼働するまでは気を緩めてはならないと改めて痛感したのを覚えています。

―今回のプロジェクトの達成感と今後についてお聞かせください。

T.K:
やはり実際にシステムの運用が始まったときは、達成感がありました。切り替えもスムーズに進み、やりきった喜びで胸が一杯になりました。
T.T:
お客様からお礼のメールをいただいたことは特に嬉しかったです。お客様の「ありがとう」の一言は最高ですよ。
A.C:
開発の途中でも喜びはありました。テストフェーズである問題が見つかったとき、お客様から「A.Cさんが来てくれたから直りますね」と言われたんです。そのときはシステムエンジニアとして信頼されていると実感し、それがさらにプロジェクトを進めていく原動力につながりました。
T.T:
A.C君が「出荷して終わりじゃない」と言いましたが、今でもその気持ちは変わりません。台風などの自然災害の報道に接すると、自分たちが納めたシステムがしっかり稼働しているかと心配になります。
A.C:
電気はちゃんと供給されて当たり前の世界。職業柄か街の家々に明かりが灯るのを見ると、ホッとします。この当たり前の光景を裏方として支えていることに誇りを感じます。
T.K:
このプロジェクトで学んだことを活かし、現在は水力発電関連のプロジェクトに携わっています。入社して10年目ということもあり、今後はマネジメント業務のスキルも磨いていきたいと思います。
T.T:
私もそろそろ中堅と呼ばれるキャリアになりました。今後は後輩の育成にも携わり、私が学んだことをしっかりと伝えていきたいと思います。知識やスキルのドキュメント化にも取り組みたいですね。
A.C:
社会インフラを支えたい思いは今後も大切にしていきたいと考えています。そのためにもよりお客様の近くで寄り添いながらシステム開発に取り組んでいきます。それがシステムエンジニアとしての成長につながると思っています。