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Category:構造・熱・軌道解析

CAE における機械学習の利用動向― 宇宙機開発への活用可能性

CAE における機械学習の利用動向― 宇宙機開発への活用可能性

我々は、CAE(Computer Aided Engineering)技術を用いて宇宙機の熱・構造に関する設計・開発事業を行っている。そのCAE技術における機械学習の活用について、近年産業界・学会で事例が多く紹介されている。本稿では、CAEの機械学習活用に関する調査報告と、「宇宙機開発分野のCAE」の機械学習活用の可能性について整理する。

CAE における機械学習の利用動向― 宇宙機開発への活用可能性[PDFファイル]

参考情報:

  • この技術レポートは、当社が展開する宇宙・通信事業の構造・熱・軌道解析ソリューションに係る技術について著述されたものです。
  • 構造・熱・軌道解析ソリューションは、鎌倉事業所が提供しています。
1 MSS 技報・Vol.30
HTV 搭載小型回収カプセル(HSRC)の航法・誘導モジュールの機能紹介と実運用結果
Introduction and Flight Operation Results of the Guidance and Navigation Software of HSRC
小林 聡* 川嶋 一誠* 春木 美鈴**Satoshi Kobayashi, Issei Kawashima, Misuzu Haruki
HTV 搭載小型回収カプセル(HSRC)は国際宇宙ステーション(ISS)からのサンプル回収を目的とした日本初の再突入カプセル実証機であり、2018 年11 月11 日に地球に再突入し、南鳥島付近の海上にて無事に回収された。HSRC の開発目的の一つとして再突入カプセルの揚力誘導制御技術の実証がある。三菱スペース・ソフトウエア株式会社(MSS)はHSRC の搭載ソフトウェアのうち、揚力誘導を担う航法・誘導モジュール(NGM)の開発を国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共に行った。NGM の機能は大きく分けて、航法機能、誘導機能、観測データ健全性監視機能から構成される。本報では、NGM のこれらの機能の紹介及びHSRC 実運用結果を基にNGM が正常に動作したことを示す。
HTV Small Re‒entry Capsule( HSRC) is the fi rst Japanese sample return capsule from the InternationalSpace Station(ISS). HSRC reentry operations were successfully completed on November11, 2018. One of the main objective of HSRC is to demonstrate the reentry guidance law for aguided lift fl ight capabilities of re‒entry capsule. Mitsubishi Space Software Co., Ltd(. MSS) developednavigation and guidance software module( NGM) of HSRC with Japan Aerospace ExplorationAgency(JAXA). NGM consisted of the navigation, guidance and the observed data assessmentsystem. In this paper, we introduce the overview of these functions and the evaluation results ofNGM using the obtained data from the real‒time HSRC operations.
*つくば事業部 第一技術部 **国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
1.まえがき
HTV 搭載小型回収カプセル(以下、HSRC)は、国際宇宙ステーション(ISS)からのサンプル回収を目的とした日本初の再突入カプセル実証機であり、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって開発され、2018 年11 月11 日に飛行実証を行った⑴(図1)。日本における再突入宇宙機はOREX ⑵、USERS ⑶、はやぶさ⑷等で実績があるが、これらは弾道飛行、つまり再突入宇宙機側による再突入中の誘導を実施していない。再突入宇宙機は再突入中の不確実性の高い空気力の影響により、落下点に大きなばらつきを有する。弾道飛行では目標点に対する落下分散域が大きいため、将来の再突入有人機の開発等を見据えた場合、再突入中の誘導は必要不可欠な技術である。そのため、HSRC の開発目的の一つとして「再突入カプセルの揚力誘導制御技術」の実証が挙げられている⑸。具体的には、バンク角制御によるダウンレンジ・クロスレンジ調整誘導技術を用いることで、世界水準の低加速度(4G 以下)による揚力飛行及び半径10 km 以内の目標範囲への誘導を実証することが、HSRC のミッション要求として設定されている。再突入カプセルの揚力誘導制御技術を実証するにあたり、HSRC は小型であるため、スペースシャトルのような図1 海上におけるHSRC の回収(©JAXA) 有翼宇宙機(L/D:1以上)と比較して、L/D が小さい2 MSS 技報・Vol.30ことが課題として挙げられる。言い換えれば、HSRC は、機体や外部環境に起因する各種誤差を吸収して目標点に精度良く到達するために飛行レンジを調整する能力(レンジ調整能力)が低いため、ロバスト性が高く、かつ高精度な誘導を実現することは難しい点が課題であり、設計を通して方針を検討した。HSRC の誘導制御を実現する搭載ソフトウェアは、シーケンス実行管理機能、外部I/O、制御機能をもつ制御・システムモジュール(CSM:Control & SystemModule)と航法、誘導機能をもつ航法・誘導モジュール(NGM:Navigation & Guidance Module)から構成される。CSM は三菱重工業株式会社が開発し、NGM はJAXA とMSS が開発した。開発したNGM は、これまでに著者らが所属するMSS つくば事業部第一技術部がJAXA による研究を支援してきた成果を実証したものである⑹ ⑺ ⑻ ⑼。NGM は大きく航法計算機能、誘導計算機能、観測データ健全性監視機能から構成される。本報でははじめに各機能を簡単に紹介する。次に、2018 年11 月11 日の実運用においてNGM の各機能が正常に動作したことを実際の運用データを使用して紹介する。2.飛行シーケンス図2にHSRC の飛行シーケンスを示す。図に示すとおり、HSRC はHTV が再突入する軌道に投入された後に、HTV から分離され、再突入誘導を行う。軌道上フェーズでは、まずHTV から分離される前のタイミングから、HSRC の慣性航法計算が開始される。HSRC は慣性航法計算の初期値となる状態量をHTV から得られないため、HSRC の打上げ前にあらかじめ設定している状態量を基に誘導目標点を計算する。HSRC は、その後HTVから分離され、GPS 衛星の捕捉のためにGPS アンテナを天頂方向へ指向させる。必要な数のGPS 衛星の捕捉に成功し、GPSR(GPS 受信機)の初期化が完了すればHSRC の位置の更新及び誘導目標点を再計算するが、初期化が完了しない場合は初期の航法値及び目標点を継続して使用し飛行する。その後、空気力が大きくなる前に揚力誘導開始時の姿勢に変更し、条件を満たすと揚力誘導フェーズへと移行する。揚力誘導フェーズでは、軌道上フェーズで設定した誘導目標点に向かって飛行する。揚力誘導は高度30 km 付近で終了し、パラシュート開傘の後、海上にて船で回収する。3.航法・誘導モジュール(NGM)の機能概要NGM はCSM からマイナーサイクル(50 Hz)及びメジャーサイクル(1Hz)で呼び出される。また、CSMから呼び出されると同時にIMU(Inertial MeasurementUnit:慣性計測装置)、GPSR の観測値やその他ステータス情報等の情報を受け取る。HSRC では、CSM から受け取ったデータをNGM における観測データ健全性監視機能(3.3 節)で使用可能なデータであるかチェックする。航法計算機能(3.1 節)では正常と認められたデータを使用して、HSRC 自身の状態量(位置、速度、姿勢、姿勢レート)を推定する。誘導計算機能(3.2 節)では、これに基づいて誘導コマンドを計算する。このようにNGMは「航法計算機能」、「誘導計算機能」、「観測データ健全性監視機能」の大きく3つの機能で構成される。以降にそれぞれの機能概要について示す。3.1 航法計算機能航法計算機能は、H–IIA ロケットやH–IIB ロケット等の宇宙機で実績のあるIMU 慣性航法アルゴリズムをベースとして現在の状態量を推定する機能である。HSRC に要求される高精度な誘導を実現するために航法精度を向上させる、つまり状態量を高精度に推定することが肝要である。そこで、HSRC ではIMU 慣性航法に加え、GPSR が使える軌道上ではIMU–GPS 複合航法アルゴリズム⑹、空気力が大きい高度ではIMU -ドラッグメジャメント(IMU–DM)複合航法アルゴリズム⑵を使用する方式を採用した。これら各種の航法計算方式はそれぞれ航法モードとして定義され、状態量やセンサ健全性等の情報を基に切り替えられる。上記は正常時の航法モードについて示したが、加えて、IMU 等の航法センサが異常であると識別された場合においても正常に推定することが可能な状態量は航法値として出力できるよう、異常時の航法モードも複数定義した。3.2 誘導計算機能誘導計算機能は、HSRC が現在飛行しているフェーズの目的に対して誘導コマンド(目標姿勢角コマンド)を計算する機能図2 HSRC の飛行シーケンス⑽ である。誘導コマンドは具体的には、GPS3 MSS 技報・Vol.30衛星の捕捉等のために揚力誘導開始前に使用する誘導コマンドと、揚力誘導時に使用する誘導コマンドがある。本節ではその中でも、HSRC 開発目的の一つである再突入カプセルの揚力誘導制御技術の実証に貢献した、揚力誘導時の誘導コマンドを計算する誘導計算機能について紹介する。HSRCの揚力誘導では、誘導目標点までのダウンレンジ及びクロスレンジの調整に関して、空力角(迎角、バンク角、横滑り角)のうち、バンク角を唯一の制御パラメータとして誘導する。飛行中のバンク角の大きさを制御することにより、揚力の面内成分の大きさを変えてダウンレンジ方向の調整を行う。つまり、バンク角を大きくすると揚力の面内成分が小さくなるためHSRC の飛行にブレーキをかけることができ、バンク角を小さくすると揚力の面内成分が大きくなるため、HSRC をより遠くへ飛行させることができる。これを調整してダウンレンジ方向の調整を行う。また、クロスレンジ方向の調整は、ヘディング角(誘導目標点に対するHSRC 飛行方向のずれ)があらかじめ設定したデッドバンドを超えた際にバンク角を右から左、あるいは左から右に切り替え(バンクリバース:図3)、デッドバンド内にヘディング角が収まるようにすることで調整を行う。なお、その他の誘導コマンドである迎角コマンドは対地速度スケジュール、横滑り角コマンドは常にゼロで出力するものとした。バンク角コマンドを計算する誘導則としては、可変ゲイン誘導則、スペースシャトル等で使用されていたクローズドフォーム誘導則、実時間予測積分誘導則等があるが、これまでのカプセル回収機の再突入誘導の研究により、それらの中で実時間予測積分誘導則が主要な誤差に対し、最も高精度であることを確認した⑹。HSRCでは本研究結果等を踏まえ、誘導則に実時間予測積分誘導則を採用した。実時間予測積分誘導則は、まずHSRC の現在位置から誘導目標点までの予測飛行レンジ(予測レンジ)を数値積分によって随時計算し、HSRC の現在位置から誘導目標点までのレンジ(航法レンジ)との差(レンジ誤差)を算出し、そのレンジ誤差が小さくなるようにバンク角コマンドを修正する。なお、実時間予測積分誘導則は誘導サイクルごとに数値積分を行うため計算負荷が高くなり、HSRC 搭載計算機上におけるNGM の処理規定時間内に本計算が終わらないことが懸念されたが、搭載可能か事前に実現性検討を行い、HSRCの搭載計算機で十分に処理可能である見込みを得たうえで採用された。予測レンジは、HSRC の局所水平面にて定義した座標系における運動方程式を数値積分することで得られ、バンク角コマンド𝜙𝜙𝜙𝜙C は、次式で求められるバンク角コマンドの余弦値から計算される⑹。cos 𝜙𝜙𝜙𝜙c = cos 𝜙𝜙𝜙𝜙c1 +𝑅𝑅𝑅𝑅NV − 𝑅𝑅𝑅𝑅pre1𝑅𝑅𝑅𝑅pre2 − 𝑅𝑅𝑅𝑅pre1(cos 𝜙𝜙𝜙𝜙c2 − cos 𝜙𝜙𝜙𝜙c1)⑴現誘導サイクルにおけるバンク角コマンドを𝜙𝜙𝜙𝜙C1 として、これを誘導終了高度まで予測積分して得られる予測レンジを𝑅𝑅𝑅𝑅pre1 とする。同様に𝜙𝜙𝜙𝜙C1 を僅かに変化させたバンク角コマンドを𝜙𝜙𝜙𝜙C2 として、これを誘導終了高度まで予測積分して得られる予測レンジを𝑅𝑅𝑅𝑅pre2 とする。バンク角コマンドを僅かにずらした場合のレンジ誤差の感度を計算し、現誘導サイクルにおいてレンジ誤差(航法レンジ𝑅𝑅𝑅𝑅NV と予測レンジ𝑅𝑅𝑅𝑅pre1 の差)がゼロとなるようなバンク角コマンド𝜙𝜙𝜙𝜙C を計算している。3.3 観測データ健全性監視機能航法計算機能及び誘導計算機能は、これまでの研究成果をHSRC による実証のために改良して実装したが、HSRC の搭載ソフトウェアを開発するにあたり、両機能に入力されるデータの健全性を評価する機能を新規に設計した。本機能は大きく、①センサ単体の健全性評価、②センサ観測データの使用可能評価、③航法計算結果の適正評価、の3種類の評価機能から構成される。人工衛星やランデブ宇宙機等の宇宙機における一般的な耐故障設計として、センサ等のハードウェアは冗長構成とし、その異常に対し、異常の検知・分離・回復を自動で行うFDIR(Fault Detection, Isolation and Recovery)と呼ばれる機能を搭載する⑾。しかしながら、HSRC には航法センサに対する冗長構成がない⑽。さらに、運用中のデータ評価及びリカバリが一切できない。そこで、分離及び回復として冗長系に移行するという一般的な宇宙機の耐故障設計は採用できないため、異常状態での飛行や、異常状態からの自動復帰についても設計している。センサ単体の健全性評価としては、航法センサであるヘディング角 [deg]対地速度 [m/sec]第3区間第2区間第1区間1000 3000 6000 6900:バンクリバース点デッドバンド図3 バンクリバース概念図4 MSS 技報・Vol.30IMU(IMU 内の加速度計及びジャイロの各々の評価を含む)、及びGPSR(各GPS 衛星との関係性を示す値の評価を含む)の健全性評価である。IMU の健全性については、故障モードや故障種別に応じて、復帰についても事前に設計を行っている。GPSR についてはGPSR により計算された航法値の健全性や、IMU–GPS 複合航法で使用するシュードレンジ・デルタレンジ等の各GPS 衛星とGPSR 間の情報に対しても健全性等の確認を行っている。また、再突入カプセルは再突入時に通信ブラックアウトと呼ばれる電波遮蔽が発生する。そのため、本事象をGPSR の異常と誤検知しないように設計している。センサ観測データの使用可能評価は、センサ個別の異常の評価とは異なり、各種航法センサの状態を複合的に判断して、センサ観測データを航法計算に供することができるかを評価する。つまり、航法センサの異常が検知されていなくても、その観測データが使用可能かを別途判断する。例えばGPS 関連の各種観測データが航法計算に使用できるかを評価し、その結果を受けて航法計算機能によって航法モードの選択を行う。航法計算結果の適正評価としては、HSRC は飛行中に航法計算結果自体の評価を行う事ができないため、計算された航法計算結果の妥当性について可能な限り評価する設計とした。航法計算結果に対して履歴情報を使用した単独の評価だけでなく、GPSR により計算された航法値を使用した評価も含めて実現している。本評価を受けて適正と判断された場合に、航法計算結果が誘導計算に供される。4.運用実績本章では、2018 年11 月11 日の実運用で回収されたHSRC に実際にロギングされた飛行データ(テレメトリデータ)を確認した結果を運用実績として紹介する。航法計算機能にて計算されたHSRC の飛行プロファイルを図4(黄線:HTV、赤線:HSRC)に示す。テレメトリデータからHSRC はHTV から分離後、目標点に向かって揚力誘導を実施して飛行したことが確認された。そして、HSRC は所定の高度でパラシュートが正常に開傘し、南鳥島付近の海上にて無事に回収された⑴。以降に、運用実績として、NGM による揚力誘導制御が動作したことを示すバンク角の評価、及び、揚力誘導制御により実現するミッション要求である「低加速度(4G 以下)」「半径10 km 以内の目標範囲に誘導」の2点の達成状況について結果を示す。HSRC の揚力飛行中にNGM において計算されたバンク角航法値、及びバンク角コマンドのプロファイルを図5に示す。バンク角コマンドは誘導開始前の60 degを基準として式⑴に基づき値が更新され、かつ、図3に示す方式に基づきバンクリバースがなされており、想定どおりの揚力誘導を実施したことが確認された。また、迎角及び横滑り角コマンドについてもNGM の設計どおりにコマンドが出力されていることが確認された⑴。ミッション要求である「低加速度(4G 以下)で揚力飛行」の達成評価として、IMU の加速度計テレメトリから計算したHSRC 飛行中の荷重倍数を確認した(図6)。図中には、飛行前にシミュレーションにより予測していた荷重倍数も「事前解析データ」として示している。最大荷重倍数は4G を大幅に下回っており、ミッション要求を達成していることを確認した。ミッション要求である「半径10 km 以内の目標範囲に誘導」の達成評価として、誘導精度を評価した(図7)。本図に示すとおり、揚力誘導終了時に目標点に対して8.31 km であり、目標の半径10 km 以内の誤差に収まって誘導開始 誘導終了6:14HTV最終軌道離脱制御終了6:24小型回収カプセル分離6:37再突入姿勢移行6:42揚力誘導開始6:50パラシュート開傘7:04着水図4 飛行プロファイル⑴図5 バンク角コマンドプロファイル⑿図6 飛行中の荷重倍数⑿5 MSS 技報・Vol.30(2) 松本 秀一,鈴木 秀人,泉 達司,森 健,菅野 和男,若宮 正男,三井 重之:軌道再突入実験機 航法・誘導・制御システムの評価,HOPE / OREX ワークショップ講演論文集,117 ~ 130,航空宇宙技術研究所(1994)(3) 大矢 晃示,松田 聖路,石井 信明:USERS カプセルの再突入飛行とその姿勢運動,宇宙航空研究開発機構研究開発報告,21 ~ 29(2005)(4) 山田 哲哉,山田 和彦,石井 信明,稲谷 芳文:はやぶさカプセルの再突入と飛行後解析,第54回宇宙科学技術連合講演会講演集,3S08,日本航空宇宙学会(2010)(5) 田邊 宏太,渡邉 泰秀,今田 高峰,宮崎 和宏,中村涼,升岡 正:HTV 搭載小型回収カプセル実証機の開発,第62 回宇宙科学技術連合講演会講演集,1L07,日本航空宇宙学会(2018)(6) 松本 秀一,和田 恵一,岩田 隆敬 ほか:カプセル回収機の再突入誘導のための軌道設計と誘導誤差解析,第55 回宇宙科学技術連合講演会講演集,1D13,日本航空宇宙学会(2011)(7) 松本 秀一,和田 恵一,岩田 隆敬 ほか:カプセル回収機の再突入誘導のための航法・誘導則の評価,第29 回誘導制御シンポジウム,計測自動制御学会(2012)(8) 本山 昇,山本 一二三,小林 聡 ほか:実時間予測積分誘導則を使用した再突入宇宙機の誘導における高精度化の検討,第57回宇宙科学技術連合講演会講演集,3I13,日本航空宇宙学会(2013)(9) Matsumoto,S.,Kondoh,Y.,Suzuki,Y.,Yamamoto,H.,Kobayashi,S.,Motoyama,N.:AccurateReal–Time Prediction Guidance Using NumericalIntegration for Reentry Spacecraft,Proc of AIAAGuidance,Navigation,and Control Conference,AIAA–2013–4646(2013)(10) 春木 美鈴,中村 涼,今田 高峰 ほか:HTV 搭載小型回収カプセル航法・誘導モジュールの開発及び誘導誤差解析, 第62 回宇宙科学技術連合講演会講演集,1L14,日本航空宇宙学会(2018)(11) 白坂 成功,堀田 成紀,蒲原 信治:階層化FDIR による高安全性航法誘導制御系の提案と宇宙ステーション補給機「こうのとり」での実現,計測自動制御学会産業論文集,10,No.11,91 ~ 99(2011)(12) 春木 美鈴,中村 涼,松本 秀一 ほか:HTV 搭載小型回収カプセル誘導制御系開発と飛行後評価,第63回宇宙科学技術連合講演会講演集,1Q03,日本航空宇宙学会(2019)おり、ミッション要求を達成した。本報に示す運用実績としては一部であるが、これらのデータを含む様々なテレメトリデータを評価し、NGMの航法計算機能、誘導計算機能、観測データの健全性監視機能が正常に動作したことを確認した。つまり、HSRCの開発目的である再突入カプセルの揚力誘導制御技術が実証された⑴。5.むすび本報では2018 年11 月11 日に飛行実証を行ったHSRCについて、MSS がJAXA と共に開発したNGM の各機能の概要を紹介した。また、NGM の各機能が実運用において正常に動作したことについて紹介した。NGM開発においては、新規に開発した観測データ健全性監視機能はあるものの、その他の機能についてはこれまでの研究成果を活かせるといった経緯もあり、短いスケジュール計画で開発が進められた。加えて様々な技術課題もあったが、無事に開発及び運用を完遂し、ミッションの成功に貢献することができたと考えている。HSRC で実現した再突入カプセルの揚力誘導制御技術は将来の有人大型再突入カプセルの実現に資する技術として開発されてきたものである。今後は本技術の高度化を進め、将来の日本の宇宙開発に貢献していきたい。最後に、これまでNGM開発を通し技術的アドバイスを頂いた、JAXA の関係者の方々に深く感謝申し上げます。参考文献(1) Haruki,M.,Nakamura,R.,Matsumoto,S.,Kobayashi,S.,Kawashima,I.,Aoki,K.,Kikuchi,N.:Post–Flight Evaluation of the Guidance and Control forRe–entry Capsule “HSRC”,8th EUCASS(2019)図7 誘導精度⑿6 MSS 技報・Vol.30執筆者紹介小林 聡1999 年入社。つくば事業部へ配属。2002 ~ 2006 年に宇宙航空研究開発機構/ HTV プロジェクトチームに出向。現在はHTV 等の宇宙機搭載ソフトウェア開発に従事。川嶋 一誠2007 年入社。つくば事業部へ配属。2010 ~ 2013 年に宇宙航空研究開発機構/ HTV プロジェクトチーム、2016 年から国立研究開発法人産業技術総合研究所/人工知能研究センターに出向。現在は産業技術総合研究所における研究の傍ら、HTV 等の宇宙機搭載ソフトウェアの開発、宇宙・防災・AI 関連のソフトウェア開発及び研究支援に従事。春木 美鈴2012 年宇宙航空研究開発機構へ入社。研究開発部門へ配属。これまで、宇宙機の誘導制御に関わる研究開発に従事。