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テクノロジー

技術レポート:アーカイブ

Category:技術レポート:アーカイブ

MSS技報VOL.21巻頭言

MSS技報VOL.21巻頭言[PDFファイル]
巻頭言
三菱電機株式会社 鎌倉製作所宇宙システム部
 HTVプロジェクト部長
津屋 直紀
 昨年、我が国の新しい宇宙機が成功裏に国際デビューを果たした。JAXA殿が開発した宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機である。HTVは国際宇宙ステーション(ISS)に実験機器、機材や乗員への食料・水・消耗品等を届ける輸送機である。これまで観測衛星、通信衛星などの衛星は多数打ち上げられているが、物資の輸送を目的とした宇宙機は我が国にとって新たな分野を切り開いた事業と言っても過言ではない。HTVのISSへのランデブ・ドッキング成功の映像は度々ニュースや特別番組等で報道されるなど、米国スペースシャトルの退役が迫る中、我が国宇宙開発における国際貢献の歴史的なエポックとなった。また、計画通りの日程で全てのミッションを達成したことで、我が国の宇宙開発の信頼性の高さを世界に対して存分に示した。 HTVはロケット、人工衛星、ISSの有人宇宙システムという三つの技術を融合した日本の宇宙開発の集大成と位置付けられており、中でもISSへの到達に不可欠なランデブ技術は、我が国が固有の自動・無人技術として戦略的に開発が進められてきたものである。具体的にはJAXA殿の「おりひめ・ひこぼし」(技術試験衛星Ⅶ型:ETS-Ⅶ)実験で習得した技術を、HTVでは厳格な有人安全要求が適用されるISSへの輸送機に必要な実用技術に高めた。我が国の宇宙機が国際有人施設であるISSに能動的に接近することが認められたことも我が国の宇宙開発にとって歴史的かつ新たな一歩であり、複雑なアビオニクス・搭載ソフトウエアのみならず、飛行計画、運用管制でも国際水準のシステム技術を実証することができた。 三菱スペース・ソフトウエア殿は、長年、三菱電機のパートナーとして「おりひめ・ひこぼし」を含む種々の衛星、搭載ソフトウエア、運用管制設備の開発に参画されてきた。 中でも打上後の飛行計画、運用管制では我が国有数の経験と実績を有している。 特集の3論文では、三菱スペース・ソフトウエア殿が活躍・貢献されたHTV技術実証機の運用管制システム、運用管制の成果が詳細に報告されている。 今後HTVには量産となる運用機6機が予定されており、その一機目(HTV2)は今年度打上予定である。また既にHTV3、HTV4の生産も進んでいる。HTVで開発した厳格な有人安全要求に適合するシステム技術、運用管制技術は、我が国が新たな宇宙機の開発や有人宇宙開発を進める際の基盤技術となることから、今後もこの新たな分野の一層の発展と三菱スペース・ソフトウエア殿の更なる活躍を大いに期待している。