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テクノロジー

技術レポート:アーカイブ

Category:技術レポート:アーカイブ

MSS技報VOL.18巻頭言

MSS技報VOL.18巻頭言[PDFファイル]
巻頭言
代表取締役社長
三宅 道昭
ソフトウェアの飛躍的な発展とともに社会は急激な変化を遂げています。人によっては、産業革命より大きな文化的な社会変化の時を迎えているという人もあります。40年前は「柔らかい洋服のことか」程度の認識はいいすぎにしても、よくて「ハードウェアのおまけ」なみにしか評価されていなかったソフトウェアが、今やおもちゃから社会システムのすみずみにまでいきわたり、人間の生き方に大きな影響を与えるようになりました。ソフトウェアを無視または軽視する人は、火が使えず「人間」との差ができてしまった「猿」のように「進化の止まった人間」として時代から取り残されていこうとしています。プログラム、ワープロ、表計算、データベース、インターネット、Web2.0そして果てしなく続くこれらソフトウェアの技術革新が社会のあり方を根底から変えてきており、まさに文化や価値観を含むイノベーションの中核になりつつあります。例えばインターネットが受験社会に与える変化について考えて見ます。これまでの受験社会においては、閉鎖された情報環境のもとで、正解のある問題の解をいかに早く見つけるかの競争であり、その競争に生き残った者が勝者とされてきました。すなわち参考書や辞書を会場にもちこんだり、インターネットで検索して情報にアクセスしたりすることなく、これまでに蓄えた暗記力を駆使して自分の頭だけで考え、問題の解を発見するゲームのようなものでした。しかし、実社会は、大半の問題に正解があるわけでも、情報環境が閉鎖されているわけでもなく、より多様な手法を駆使して広く自由に情報や知識にアクセスし、自分の築いた人的ネットワークも活用しながら自分の前にある問題をより早く解決することが求められます。インターネット社会では、グーグルやヤフーの検索ツールならびにSNSのようなインタラクテイブなサービスを通じて、必要な情報や知識に自由にアクセスし、必ずしも絶対的正解のない課題に対してさえ、相対的正解(複数の解決策)を迅速に準備し提供することのできる人たちが勝者または成功者となります。世の中は急速に、WEB2.0の時代に突入しており、静的または独立性の高いこれまでのようなネットワークから確実にサーバーやコンテンツ同士がシームレスに連動した社会的なネットワークへと進化を続けています。この結果、社会や技術がリニア(線形的)からエクスポネンシャル(指数関数的)に進歩していくことになります。Web2.0が受験社会にどのような影響を与えるかこれも一つの社会科学的実験です。当社へ入社を希望される皆様と当社の社員がインターネット上でいくつかのテーマで意見を交わし、その会話の中から、論理能力、やる気、協調性などをコンピューターが判定し合格者を決めるようになる日もそう遠くないかもしれません。未来の社会や技術に優れた洞察をされてきた石井威望先生は、「20世紀の複数の科学技術が相互作用の結果、質的変化の驚異的連鎖が生まれた事例の一つがメカトロニクスである。・・日本の技術力はこのメカトロニクス中心の製造システムの実現に傾注され、これによって史上初めて日本の技術の独自性と先進性が世界に評価され市場における技術優位を確保し・・かつて先進国から受けていた低価格・低品質との評価を完全に覆すことに成功した。」「21世紀にはナノテクノロジーと量子ICTが20世紀の機械技術やエレクトロニクスに入れ替わり、“ナノクインNanoQUINE”(ナノ量子情報エレクトロニクス連携研究拠点)の重要な実験研究から新しい組み合わせが発想されねばならないであろう。」と述べられています。さらに次の局面では、「ソフトウェアのICT利用面での対応戦略が不可欠となる。」とも指摘され、「今まで情報の消費者の立場にあったインターネット利用者が情報発信者に代わり、CGM(Consumer Generated Media)を実現させた動画共有サイト『You Tube(ユーチューブ)』が最近の最も衝撃的な事例である。」とされています。ソフトウェア業界に籍をおくものとして、21世紀に日本の技術力が活力を維持するためにも、事業や技術の開発に当たって私はCGMの動向が示唆する爆発的ソフトウェア・パワーに常に留意していかなければならないと考えております。安倍内閣が21世紀の日本再生のために掲げている「イノベーション25戦略」にも注目しながら、本号には当社の主力事業である宇宙、防衛、バイオ事業に関連した論文に加え、ソフトウェア開発のインフラとなっている「開発環境構築事例」ならびに当社の「iNET事業開拓室」が次世代を担う新事業として開発している「位置情報の新たなインターネット利用の可能性」についての解説論稿をあわせ5点を掲載しています。また製品・サービスについては、情報セキュリティー、防災システム、インターネット・通信、バイオインフォマティクスならびに医療支援システムの各分野から特徴的な製品・サービスを紹介しています。お客様、読者の皆様には引き続き当社の事業・技術開発にご期待頂き、あわせてご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。