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テクノロジー

技術レポート:アーカイブ

Category:技術レポート:アーカイブ

製品サービス特集 医療支援システム分野

製品サービス特集 医療支援システム分野[PDFファイル]
MSS技報・Vol.18 19
医療支援システム分野
製品・サービス特集
飛躍的に発展を遂げたコンピューター技術と、その利用技術である情報処理技術は、非常に高度な知的情報処理を可能にした。これを医療に適用しようとしているものの一つに、『コンピューター支援診断』(CAD:「シーエーディー」と読む)がある。当社製品Truedia/XRの持つ「テンポラル・サブトラクション技術」はCADの一つであり、胸部X線検査の診断現場における、医師の強力なサポートとして期待が高まっている。顧客の運用に応じて、大きく2種類の構成がある。
●PACSサーバモデル
大容量のDICOM画像保存サーバ(PACSサーバ)に胸部X線画像の差分画像作成機能(ソフトウェア)を付加した構成(Truedia/XRサーバ)と、検診業務で特化した画面操作(例えば、前回、今回、差分の同期一括表示)を可能とするビューワ(Truedia/XRクライアント)で構成する、サーバ/クライアントモデル。
●CADサーバモデル
既にDICOMサーバが運用されている施設に対して、差分画像作成機能のみを付加的に提供することで、既に保存されている胸部X線の過去画像を有効活用するモデル。
蜊概 要
CADは、コンピュータが勝手に病名を判断したりするものではない。最終判断を行うのはあくまでも医師であり、CADは、その判断材料を、第二の意見(セカンドオピニオン)として提供するものである。CADの研究は、アメリカ シカゴ大学カートロスマン研究所 土井教授らによって1985年から研究が積み重ねられている。
三菱スペース・ソフトウエア株式会社が商品化したTruedia/XRは、CADの1つであり、単純胸部X線写真のテンポラル・サブトラクション画像(経時的差分画像)を作成するソフトウェアである。システムの開発にあたり、シカゴ大学カートロスマン研究所からの技術ライセンスを受け、国内初の実用的なCADソフトウェアを開発することに成功した。
蜊開発の経緯
胸部単純X線写真は、多くの臨床では、同一患者の過去画像と現在画像を比べて読影(比較読影)することが行われている。
比較読影の目的は、過去画像に含まれていない新しい病巣を見つけることである。そこで、現在画像から過去画像を差し引くことによって、2つの画像に共通の正常構造を取り除き、新しい病巣の部分、あるいは病巣の変化分だけを示すことができれば、医師は、この経時的変化の強調された差分画像(テンポラル・サブトラクション画像)をオリジナル画像に続く第2の読影支援画像として利用することができる。(図1)
Truedia/XRは、これまで医師が、頭の中だけでイメージしていたテンポラル・サブトラクション画像を、誰にでも見える形にしている。
蜊特 長
●画像の非線形位置合わせ技術
異なる時期に撮影された胸部X線写真は、撮影体位が異なる。撮影体位の変動は三次元的なものであり、二次元の画像に投影された場合、並行移動、回転といった線形処理のみでその位置合わせを行うことは、不可能である。そこで、画像を小領域に区分し、小領域毎の変動を解析した結果を統合することで、非線形な変動モデルを推定している。この推定モデルを用いて、非線形な画像変換を行うことで、撮影体位の変動を補正することがで
きる。この技術を、画像の非線形ワーピング、と呼んでいる。
●医用画像標準規格への準拠
Truedia/XRの外部I/Fは、作成するテンポラル・サブトラクション画像の内容を含め、DICOM3.0規格(医用画像のフォーマットと通信プロトコルについての世界標準規格)に準拠している。これにより、国内外の主要な医用画像装置メーカおよび、医用画像システムベンダの製品との高い接続性を実現でき、相互運用性が高まることで、導入のし易さと顧客の利便に寄与している。
蜊要素技術
Truedia/XR
胸部X線読影支援ソフトウェア
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医療支援システム分野
製品・サービス特集
図1 テンポラル・サブトラクション法概要
PACS:Picture Archivng and Communication System
CAD:Comuputer Aided-Diagnosis
DICOM:Digital Imaging and COmmunications in Medicine
●顧客の運用サポート
医療施設における保存画像は、過去の診断のレビューに用いられる等のため、消失が許されない。また、一般的に、日々大量の画像が発生するため、その保存容量も比較的大きい。一方で、顧客のシステム導入においては、コストを抑えた合理的なシステムが求められる。
Truedia/XRは、MSS事業所からの自動遠隔監視、遠隔保守、大容量画像データベースのワームスタンバイといった技術的な仕組みにより、合理的な価格で、顧客の運用をサポートできる仕組みを提供している。
MSS技報・Vol.18 21
昨今の医療施設におけるDICOM画像によるデジタル化普及により、デジタル画像の取り扱いについても、医療機関、ならびに関連するメーカが意図することなく個人情報が漏洩してしまうことを防止する必要性が高まっており、診療データに含まれる、個人を識別できる情報を削除・匿名化するための技術的なソリューションに対して、期待が高まっている。
WhiteBerryは、簡単な操作で、医用画像の個人情報を匿名化、暗号化することで、個人情報を扱う医療現場における、情報漏えいリスクを低減するためのソフトウェアである。
暗号化機能等を省いた簡易版「WhiteBerry/Lite」も用意し、幅広い顧客へソリューションを提供できるようにラインアップを揃えている。
WhiteBerry
蜊概 要
医用画像個人情報匿名化ソフトウェア
医療支援システム分野
製品・サービス特集
DICOM画像データ内の個人を特定し得る情報(患者名、患者ID、施設名称等)を匿名化、暗号化できる。匿名化/暗号化する情報は、顧客施設のセキュリティポリシーや、業務内容に応じて顧客が設定できるように、その手段をGUIで提供している。また、本ソフトウェアの外部I/Fは、DICOM3.0規格に準拠しており、顧客が既に運用している医用画像システムに対して、簡便に接続できるようになっている。
蜊特 長
図1 医用画像の匿名化/暗号化概要
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医療支援システム分野
製品・サービス特集
・検査/診断の他施設への依頼より精密な検査を行うため、他施設に対して、自施設の患者の検査を依頼する場合がある。また、自施設で検査した患者を、他施設へ紹介して診断を依頼する場合もある。このような、医療施設間の相互運用において、施設間での画像の授受が頻繁に発生するため、この間の画像の運搬もしくは、伝送時に、個人情報の匿名化/暗号化を行う。
・症例の収集
製薬における治験や、薬品の市場情報収集等、複数の医療施設からの症例を、ある拠点に収集する場合、その画像の運搬もしくは、伝送時に、個人情報の匿名化を行う。
・症例の保管
症例によっては、長期間の症例保存が義務付けられているものがある等のため、施設内で長期間、オフライン媒体(DVD-RAM等)で画像を保管する場合がある。この際に、暗号化を行うことで、媒体の紛失、盗難時の情報漏えいを予防する。
蜊典型的な用途
●強固な暗号化アルゴリズム
情報の暗号化には、公開鍵暗号化(RSA:4,096bit)+共通鍵暗号化(MISTY1:128bit)を複合させた暗号化方式を採用している。世界最高水準にある秘密鍵型の暗号方式MISTYと、公開鍵暗号化方式を組み合わせることにより、より強度の高い暗号化を実現している。
●真正性の証明
医用画像の保存時に、電子署名付きの認証コード(SHA-512)を付加し、画像入手時に真正性の検証を行うことで、医用画像の運搬および、伝送中に、内容の改ざんが行われていないことを保証している。また、情報提供者(画像送付者)の証明も可能となっている。
●情報の分離
医用画像に含まれる画像のうち、暗号化を必要とする情報を、まずは画像から物理的に分離し、分離された情報に対して暗号化を行う。これにより、情報を分離した後の画像は、セキュリティ上安全な状態として取り扱うことが可能である。これにより、万が一画像のみが流出した場合でも、個人を特定する情報は流出しないことを、ユーザに対するフェールセーフの一つとして、提供している。
●DICOM3.0規格準拠
本ソフトウェアの外部I/Fは、DICOM3.0(医用画像のフォーマットと通信に関する世界標準規格)に準拠することで、他システムとの高い接続性を実現している。これにより、顧客に対して、自社製品Truedia/XRを含む、他の医用画像システムとの相互運用による情報セキュリティ・ソリューションの提案を可能としている。
蜊要素技術
GUI:Graphical User Interfacce
MISTY:三菱電機が開発した秘密鍵型の暗号方式。国内の暗号方式としては初めての国際標準規格。
RSA:1978年に開発された公開鍵暗号方式の一つ。公開鍵暗号の標準として広く普及している。
DICOM:Digital Imaging and COmmunications in Medicine