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Category:情報処理システム
COCO-DATES利用ビジネスCOCOPRICOシリーズの開発

COCO-DATES(ココデイツ)は、衛星利用ビジネスの一環として2005年3月から三菱電機(株)がスタートした、位置時間証明を行うデータ配信事業である。GPS衛星を用いて測位する現在地の情報と、その時刻にしか得ることのできない気象画像(雲の形)を結びつけて、12桁のコードを生成・発行し、このコードをインターネット等で照会することで、位置と時刻を証明するというユニークなサービスである。この12桁のコードをCOCO-DATESコードと呼び、ラベルや写真などと組み合わせることで、トレーサビリティーや事象証明など、さまざまな分野への応用が期待されている。
当社は三菱電機(株)のCOCO-DATES事業に企画段階から参画し、デモシステム、パイロットシステム等の開発を経て、2004年度末までに商用システムの構築を行ってきた。さらに2005年度はCOCO-DATES応用事業への展開として、写真証商用サービスに向けた、システムの開発に従事している。
これらCOCO-DATES関連の開発は、三菱電機(株)からの受託により行っているが、新たな市場創出の機会を得たことを最大限に活用し、MSSとしても自社事業の立ち上げに向けた取り組みを推進すべく、2005年度より販売目的の製品開発を行っている。
本稿では、COCO-DATESサービスの紹介から、当社の製品開発目的、今後の展開について、新規事業立ち上げに向けた、現在進行中の取り組みを紹介する。
参考情報:
- この技術レポートは、当社が展開する防衛システム事業のレーダー関連ソリューションに係る技術について著述されたものです。
- レーダー関連ソリューションは、通信機事業所が提供しています。
COCO-DATES利用ビジネスCOCOPRICOシリーズの開発 37 *関西事業部第四技術部 **技術推進部COCO-DATES利用ビジネスCOCOPRICOシリーズの開発The development of COCOPRICO Series吉本 誠* 糸谷 友良**Makoto Yoshimoto, Tomoyoshi Itotani COCO-DATES(ココデイツ)※1は、衛星利用ビジネスの一環として2005年3月から三菱電機㈱がスタートした、位置時間証明を行うデータ配信事業である。GPS衛星を用いて測位する現在地の情報と、その時刻にしか得ることのできない気象画像(雲の形)を結びつけて、12桁のコードを生成・発行し、このコードをインターネット等で照会することで、位置と時刻を証明するというユニークなサービスである。この12桁のコードをCOCO-DATESコードと呼び、ラベルや写真などと組み合わせることで、トレーサビリティーや事象証明など、さまざまな分野への応用が期待されている。当社は三菱電機㈱のCOCO-DATES事業に企画段階から参画し、デモシステム、パイロットシステム等の開発を経て、2004年度末までに商用システムの構築を行ってきた。さらに2005年度はCOCODATES応用事業への展開として、写真証明商用サービスに向けた、システムの開発に従事している。これらCOCO-DATES関連の開発は、三菱電機㈱からの委託により行っているが、新たな市場創出の機会を得たことを最大限に活用し、MSSとしても自社事業の立ち上げに向けた取り組みを推進すべく、2005年度より販売目的の製品開発を行っている。本稿では、COCO-DATESサービスの紹介から、当社の製品開発目的、今後の展開について、新規事業立ち上げに向けた、現在進行中の取り組みを紹介する。 COCO-DATES is a data distribution business that Mitsubishi Electric Corp. launched as a part ofsatellite application in March 2005. It is a unique service of proving position and time because ofCOCO-DATES code that is made up of 12 figures. The code is combined with the weather picture(form of clouds)and GPS location information. No one can fake up a future code because theweather picture can be available only after it appeared. Everyone can get the information of the codethrough the Internet, etc. COCO-DATES is expected to expand in various applications, such astraceability and phenomenon proof by combining with a label, a photograph, etc.MSS has taken part in the COCO-DATES business of Mitsubishi Electric Corp. from the plan stage.We built the commercial system at the end of the 2004 fiscal year through development of demosystems, pilot systems and so on. Now we are developing the photograph proof service system in2005 fiscal year towards a new application of COCO-DATES.Mitsubishi Electric Corp. has entrusted all these COCO-DATES-related developments to MSS. Weare also developing our own commercial products since the beginning of 2005 fiscal year aiming atour new business. It is why we got possibilities to create a new market associated with COCODATES.In this paper, we introduce the COCO-DATES service, the purpose of our own products, the futureplans and our current work to the new business.1.COCO-DATESサービスの紹介COCO-DATES(Correct Coordinates and DateStamp)は、「ここで・いつ」から作られた造語であり、そのサービス名称が表すように、「位置」と「時刻」の2つの事象を関連付け、そのとき、その場所に存在したことを証明するサービス事業である。「位置」と「時刻」から12桁のコード(COCO-DATESコード)を生成し、これを証明情報として提供する「位置時間証明サービス」を基本と※1 COCO-DATES(ココデイツ)は三菱電機㈱の登録商標です。MSS技報・Vol.17 38し、さらに位置と時刻に「その場所」の写真画像を関連付けた「写真証明サービス」が現在計画され、開発が進められている。以下に、サービス内容とその原理について簡単に紹介する。1.1 COCO-DATESの原理と特徴盧時刻の証明その時刻である証明として、一般に公開されている自然現象を元にした情報(現時点では気象庁が公開する「気象衛星の画像」を採用)をハッシュ関数で数値化してCOCO-DATESコードの生成に利用する。自然現象は一般的に不規則であり、予測が困難なため、未来の数値化が不可能であるという特性を利用し、その時点で最新(新鮮)であることを保証する。また一般に公開されている気象衛星の画像を用いることで、その画像が元になったハッシュ値から生成されたコードであることを、第三者が評価可能であり、その証明力の客観性を高めている。COCO-DATESの最大の特徴は、この時刻の証明原理であり、未来の時刻を捏造できないという特性は、たとえばあらかじめ未来の時刻の製造ラベルを作れない(製造年月日の捏造ができない)ことを示しており、その応用範囲の可能性を秘めている。盪位置の証明端末において、GPSから入手した測位情報をCOCODATESセンターに送り、その情報をCOCO-DATESコードに関連付けて管理する。端末で取得したGPSの情報は衛星の数を含め、その時間にその地点でしか得られないという特性を利用して位置を保証する。さらにCOCO-DATESセンターとの通信プロトコルには、端末の固体認証の仕組みがあり、機器固有の情報(製造番号など)を用いて、登録済みの機器以外での利用を禁止している。これは、アプリケーション、アカウント情報をコピーして、他の場所に設置した同一アカウントから、位置を偽ってコードを発行することを防いでいる。蘯サービスの仕組み利用者からのコード発行要求に応じ、これら「時間」と「位置」から生成したCOCO-DATESコードを、さらにHMAC鍵にて暗号化したデータセットにして、インターネットなどの通信手段を介して提供するサービスである。一般の利用者はその証明コードから「時間」と「位置」を確認するWeb照会サービスを利用して、担保された「時間」と「位置」を得ることができる。コード発行要求を行う、“証明をしたい”利用者が契約者となり、この契約者から月額の利用料金を徴収するのがCOCO-DATESのビジネスモデルである。なお、Web照会サービスを通じて、COCO-DATESコードを確認する利用者に対しては無償でサービスを提供する。類似ビジネスとしては、セイコー電子やアマノ等が実施するタイムスタンプサービスが存在するが、これらは電子署名技術を用いたコンピュータシステム内でのみ有効なサービスであるのに対し、コンピュータシステム外で有効であるCOCO-DATESは、紙媒体やICタグ等での利用が可能となるため、導入範囲が広く、多くの市場ニーズに応えることができる。1.2 位置時間証明サービスGPS付き携帯電話やGPSカードを備えたPCなどを端末とし、COCO-DATES契約者は証明したい時間、場所でCOCO-DATESコードを取得する。取得したコードはアプリケーションなどを介して、出荷ラベルや、作業報告書などに印字され、これを流通させることで、出荷品や、書類に記載された場所や日時に担保を与えることができる。利用者は12桁のコードをWebサービスで照会するか、印字されたQRコード※2から携帯電話を経由して確認することで、時間と場所を選ばずに、いつでもどこでも証明情報を得ることが可能となる。1.3 写真証明サービスカメラ付き携帯電話や、GPS付きCOCO-DATES専用カメラなどを端末とし、位置時間証明サービスに、さらにその場で撮影した写真画像を組み合わせ、写真とCOCO-DATESコードに電子署名をつけてサーバに保存するサービスである。位置と時間が担保された偽造されない写真であることと、サーバに保存されることにより存在証明が可能なことから、工事の施工証明や、事故現場証明、派遣業務の作業報告等への応用が期待されている。2.COCOPRICO※3の開発COCO-DATESはそのユニークなサービス内容から、さまざまな分野への応用が期待されているが、我々にとっては新たな試みでもあり、具体的な適用分野を模索していく必要がある。そのため、COCOPRICOシリーズを開発することで、マーケティング調査を実施し、その結果に基づき、ターゲット分野を絞り込み、改良を加え※2 QRコードは㈱デンソーウェーブの登録商標です。※3 COCOPRICOは三菱スペース・ソフトウエア㈱で商標登録出願中です。39て市場へ製品投入を図っていくことを考えている。以下にCOCOPRICOの位置づけ、製品機能について紹介する。2.1 製品の位置づけCOCO-DATESのサービスの原理・特性をソフトウェア開発の視点で捉えた場合、①COCO-DATES応用アプリケーションを開発するにあたり、COCO-DATESセンターとのコードの授受にHMAC鍵の暗号/複合化など煩雑な通信手続処理を実装する必要がある。②端末側に取得したCOCO-DATESコードを加工するアプリケーションが必要となる。上記の2つの開発アイテムが必須となり、これらソフトウェアの開発が、COCO-DATES利用事業が拡大する際に、避けて通れない部分となる。これらをサポートするのがCOCOPRICOである。2.2 製品機能COCOPRICOはWindowsで動作するアプリケーションであり、取得したCOCO-DATESコードと、撮影した写真から、名刺サイズのカードを印刷するラベル印刷パッケージS/Wである。COCOPRICOは、イベント等の来場者記念や入場証明、産地表示などに応用が可能であり、以下の特徴を持っている。盧COCO-DATESによる位置時間証明情報提供COCO-DATESを利用し、位置と時間の証明情報であるCOCO-DATESコードを発行し、ラベルに印刷することで、そのとき、その場所をCOCO-DATESセンターでインターネット図1 COCOPRICOのシステム構成①レイアウト編集②撮影③COCO-DATESコード取得④印刷COCO-DATESコードCOCO-DATESコード照会用QRコード図2 COCOPRICOの画面例構成品スペック備考パソコン・CPU:Celelon M or Pentium M 1GHz以上・メモリ:256MB以上・HDD:Cドライブに空き容量10GB以上・OS:WindowsXP SP2・USB2.0×1以上(USBカメラ接続用)・PCMCIA×1以上(GPSレシーバ接続用)・インターネット接続USBカメラ30万画素以上CCDセンサー動作確認機種 ロジクール:QV4000WHGPSレシーバ・シリアル接続動作確認機種・NMEA GGAフォーマット出力IO DATA:CFGPS2IO DATA:PCCF-ADP(変換アダプタ)IO DATA:GPS-ANT/CF2(GPSアンテナ)プリンタ名刺サイズカードが印刷可能なカラープリンタ動作確認機種 Canon:PIXUS iP90表1 COCOPRICOの動作環境MSS技報・Vol.17 40照会可能とする。盪COCO-DATESの写真証明に対応画面からの設定により、COCOPRICOで撮影した写真をCOCO-DATESサーバへアップロードすることが選択可能であり、印刷したラベルを、そのまま証明写真として利用できる。蘯さまざまな場面に応用可能な写真印刷ラベル印刷時に、撮影した写真を同時に印刷するため、撮影した風景、物、人物とCOCO-DATESを組み合わせたオリジナルラベルを簡単に作成することが可能である。盻豊富なレイアウト編集ラベルのタイトル、説明、ロゴなどを自由に設定できるため、用途に応じて、柔軟なデザインのラベル印刷が可能である。眈汎用的なPC、プリンタに対応標準的なWindowsパソコンとWindowsに対応したプリンタ、市販のUSBカメラ、GPSカードがあれば、特別な機器を用意することなく、パッケージ単体での利用が簡単に行える。3.COCOPRICOの適用例COCOPRICOは、COCO-DATESサービスの拡大に同期して、自社事業立ち上げへつなげていくための製品として位置づけている。以下にいくつかの具体的な適用例を紹介する。3.1 来場者記念イベントや観光地、施設の見学者などを対象にそのときその場所に来たことを証明する、来場記念カードを発行する。また、アミューズメントの色合いも強く、デモや人集めのために導入する顧客をターゲットにしていくことで、COCO-DATESの認知度を高める。三菱電機㈱の各支社、イベント企画会社等がターゲットユーザとなる。3.2 入退出管理身分証として利用し、施設構内への入退管理へ適用する。従来の入退管理では、①ICカードの場合は1枚2,000円程度の発行コストが発生する、②紙による簡易身分証では、コピー等の偽造が簡単に行えてしまう、等の問題がある。これに対し、COCOPRICOを利用して身分証を発行することで、①1枚あたりの発行コストが数百円と安価に抑えられる、②写真がサーバに保管されており、偽造ができないというCOCO-DATESサービスの特徴が、そのまま入退管理のニーズに適合する。ターゲットユーザは製造業の各工場、研究所等となる。4.今後の展開COCOPRICOシリーズは、導入しやすいパッケージS/Wであり、その単体販売で収益を得るモデルであるが、マーケティングやターゲット分野の絞り込みのための道具としての活用も念頭に置き、将来的には、サーバ集約型(ASP)へ展開することも視野に入れている。サーバ集約型(ASP)のビジネスモデルでは、成功の鍵はコンテンツであるが、幸いCOCOPRICOの適用事例も増えつつあり、早期にそのコンテンツが見出せる可能性が出来てきている。そして最終目標である自社事業の創出に向けて努力していきたい。最後にこれまでの取り組みと今後の展開計画について紹介する。4.1 第一段階:基本端末アプリの開発(Fy05 1Q~2Q)初期の段階では、「印刷パッケージ」など、クライアント端末として単品販売可能な製品を開発し、市場に投入する。これら製品を主として販促に活用しながら、COCO-DATESの利用シーンを具体化していく。【取り組みと実績】盧COCO-DATESスタンプへの適用PDF作成時に、ヘッダ部にCOCO-DATESコードを自動的に組み込むAcrobatプラグインのデモ開発へ適用されている。盪業務用プリンタへの適用2005年11月から、京都の一部地域で、COCO-DATESコードを印刷した鶏卵パックの流通が開始された。ここにも弊社のCOCOPRICOが適用されている。4.2 第二段階:共通サービス基盤の開発(Fy05 3Q~)第一段階の展開の中からSI受託案件を獲得し、カスタマイズなどを通じて、ニーズ、ターゲットドメインを深堀り、具体化させる。その過程で、サーバ機能を含む、比較的付加価値の高いシステムパッケージの自社開発を推進、展開を図る。システムパッケージの販売は自社事業収益の柱の一つとして成長させる。【取り組みと実績】盧入退管理への適用工場の入構者管理システムを開発するSIerが、入構許可証の印刷装置として、COCOPRICOを導入。来社予定一覧を取り込み、許可証発行履歴を蓄積、他システムと連携できるようにする部位を、COCOPRICOのオプションとして開発する。4.3 第三段階:付加価値サービスの構築(Fy05 4Q~)更なる機能を拡張開発し、ASPとしてサービスを実41施していく。ASPサービスにすることで、自社運営サーバを持たない、中小事業者にも、COCO-DATESを広く利用する価値の創出と機会を提供することが可能となる。市場展開としては、投資能力を持つ顧客に対する、「SI+システムパッケージ販売」と、中小企業向け「ASPサービス」の2本立てで進める。【取り組みと実績】盧技術蓄積実現に向けての技術シーズとして、COCO-DATESセンターの構築時に培った、24時間稼動Webサービスの構築ノウハウ、実績がある。また、NTT Docomo社や、KDDI社の携帯電話でGPS/カメラ/インターネット通信を駆使して、COCO-DATESと連携する携帯アプリ開発のノウハウも蓄積済みである。これらノウハウをキーにして、COCOPRICOを活用したスパイラルな事業展開を計画、実行していく。5.むすび以上のように、COCOPRICOシリーズの開発、ならびに、この開発を通じて、自社事業の立ち上げを目指した取り組みについて述べてきた。新たな取り組みであること、市場の変化が激しく、数ヵ月後の予測も難しい状況であること、さらに、我々自身の活動の規模・質ともにまだまだ手探りの部分が多いことなど、発展途上の段階にあるが、このような取り組みの中から、将来のMSSの新たな事業を生み出すことができればと考えている。ここで紹介した取り組みの経過については、また次の機会に紹介したい。