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テクノロジー

技術レポート:アーカイブ

Category:技術レポート:アーカイブ

MMS技報VOL.29巻頭言

MMS技報VOL.29巻頭言[PDFファイル]
巻頭言
代表取締役社長
三宅 道昭
インテルの創業者ゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した「ムーアの法則」が40年も続いて、多くの企業が次々とより高い機能・性能のエレクトロニクス製品を安い価格で提供してきた結果、社会のあらゆる分野に加速的に情報技術(IT)化が進展してきています。ユビキタス社会が本格化し、利用者にとってより使い易く、より役立つIT社会の実現のためには、標準化の重要性がますます高まり、オープンなプラットフォームやインターフェース環境が求められています。リナックスに代表されるオープン・ソフトウェアの登場によるソフトウェアの無料化、ADSLのような技術の発展に伴うブロードバンドの普及、グーグルによる検索エンジンの無償サービスの充実によって、誰もが殆どコストを意識せずにIT社会を享受できることになりました。デジタル家電も自動車も、多くの製品がIT化することによって、企業間の競争は激しくなり、ユーザーの要求もますます高度になり、地域的にも欧米だけでなく、中国、韓国、ベトナムにも広がり、玉石混交の開発・製品も生み出されていますので、石と玉を識別する技術の開発も必要になってきています。情報技術の高度化は通信や放送の技術向上と相まって、はじめて有効に機能します。従来の通信は、法人や企業が一方的に消費者や個人に送りつける方式が中心でありましたが、2004年以降は、ブログを代表とする個人の情報発信が急速に増えてきています。更にソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)といったインタラクティブなサービスも提供され始めています。ブログでは、双方向性がトラックバックやコメントという形に留まり限定的であるのに対し、SNSでは双方向性の極めて高い個人の情報共有が行われるようになるものと予想されます。こうした個人間の情報流通の拡大とネットワークのブロードバンド化によって、個人間でも動画のやりとりが増え、それがユビキタス化、モバイル化、ウェアラブル化へと進展していき、ますます厖大な情報が飛び交うことになります。この大量の情報が群衆の叡智によって相乗(シナジー)効果を発揮し、プロフェッショナルや専門家より、むしろ質の高い新しい価値を創造しはじめてきているのです。勿論、一方でウイルスの氾濫や、なりすまし、不正アクセス、漏洩など、社会の安心・安全・安定を脅かす状況も露呈してきており、この技術発展を手放しで喜ぶことはできません。来るべき2010年には量子通信が実用されるものと予想されており、更に2020年以降は、量子コンピュータやテレパシー通信といった新しい技術の開発も夢ではないかも知れません。このように、ITやエレクトロニクス産業をとりまく技術開発は無限の可能性を秘めていますが、同時に急激な変化は社会的な不安定も引き起こすことから、一定の歯止めが加わることによって、技術発展に一進一退や景気の浮き沈みはあるものの、この産業自体は決して衰退することなく、長期的には「コンドラチェフの波」の法則によって50年のサイクルでスパイラルに飛躍していくものと考えられます。私たちは、IT、ソフトウェアという洋々たる未来を抱えた産業の中で、大変化の「曙」(魁)の時代に身をおいている幸運に喜びを感じ、責任を果たしていきたいものです。日立をはじめとする日本の技術をリードしてきた先達の名門企業は、「技術評論」や「技報」を既に創刊以来1,000号を超えて発行しているのに比べると、当社の「MSS技報」はまだ17号と、歴史もその内容も浅いものの、極力多くのエンジニアに発表の機会を作り、これらの発表を通じ、更に技術に磨きをかけ、新しい発見・発明のきっかけになることを期待しています。本号では、自社製品の開発に係わる論文を3点、生産基盤強化に関するものを3点、技術基盤の強化を図るものを2点、合計8点の論文を掲載いたしました。また、「小型衛星における開発プロセスの効率化」および「多偏波干渉SAR画像の相関解析」の2テーマは、当社員が2005年度に米国留学で培った成果を披露しています。次号では、IT技術の動向を先見し、予め構想検討を行い、更に特徴のある技報にすべく、取り組む考えでありますので、お客様、読者の皆様には引き続きご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。