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2024年度 三菱電機ソフトウエア技術レポート
(コラム)

セキュア大容量ファイル転送サービス SPACE PORTER

元ファイルを記録しないセキュアな方式と
管理者の業務負荷を低減する統制機能で
大容量のファイルを安全に転送

三菱電機ソフトウエア株式会社(MESW)が提供するSPACE PORTER(スペースポーター)は、セキュアなSaaS型ファイル転送サービスです。電子メールでは送れないような大容量ファイルをすべてメモリー上で暗号化し、元ファイルを記録しない方式で安全に転送することができます。また、利用者の利便性だけでなく、企業の管理者の業務負荷を低減するための機能を有し、セキュリティーと管理性に優れたサービスで、幅広い企業に採用いただいています。

  • ■林 拓也(ハヤシ タクヤ)

    2008年入社。入社以来、セキュリティー事業に従事。2024年よりSPACE PORTERのプロダクトマネージャーとして、事業戦略、開発、運用、保守、提案活動など幅広く担当。電子システム事業統括部 鎌倉事業所 ICTソリューション開発部 第一課

  • ■鎌田 七海(カマタ ナナミ)

    2024年入社。SPACE PORTERの開発に加え、保守、サポートなども担当。電子システム事業統括部 鎌倉事業所 ICTソリューション開発部 第一課

従来のファイル転送はリスクだらけ
セキュアなファイル転送サービスを開発

かつての印刷した紙面を郵送するという仕事も、今や多くがファイルを転送する方法に変わり、業務の効率化が図られています。ファイルのやり取りは、従来から大きく三つの手段があります。

一つ目がメール添付です。電子メールへの添付によるファイルのやり取りには大容量のファイルが送れないという問題があります。また、送信先を間違えたり、添付ファイルの選択を間違えたりという誤送信により、情報が漏洩するリスクがあります。二つ目が物理媒体です。メールで送れない大容量のファイルを書き込みのできるCDやDVD、または、USBメモリーといった物理媒体に記録し、渡すという手段です。この手段は、物理媒体の形状から紛失・盗難のリスクがあります。また、利用後にその物理媒体が正しく廃棄されたかを管理する課題もあります。三つ目が無料転送サービスやオンラインストレージです。これらのサービスはコンシューマー向けのものが多く、ビジネス向けのものよりもセキュリティー対策が不十分であったり、社員が個人で登録・利用すると管理者による統制が効かずシャドーITの温床になったりといったリスクがあります。

このような三つの課題を背景に、MESWは大容量ファイルを安全に転送することができるセキュアなファイル転送サービスSPACE PORTERの開発を決定しました。

セキュリティーに加えて管理面も強化
上長承認や送受信記録機能も搭載

SPACE PORTERの操作は簡単です。SPACE PORTERでファイルを送る時、送信者はファイルをSPACE PORTERへアップロードします。そして、受信者はSPACE PORTERが通知する専用URLからファイルをダウンロードします。すると、送信者はSPACE PORTERからダウンロード完了通知を受け取ります(図1)。基本機能で構成される「Standard エディション」に加え、グループ管理と強化された承認機能でよりセキュアなファイル転送を実現する「Business エディション」を用意しています。

ICTソリューション開発部 第一課の林 拓也氏は、SPACE PORTERの特長を次のように語ります。

「SPACE PORTERは相手先までの通信とファイルの暗号化をすべてメモリー上で実施します。これはMESW独自の技術で特許を取得しています。サーバーに元のファイルが残らないため、高い安全性が確保されます」

SPACE PORTERはセキュリティーにとどまらず、管理性の高さも特長の一つです。

「金融業のある会社では、メール添付と物理媒体を用いていたファイルのやり取りをSPACE PORTERに変更しました。その結果、上長承認フローによるファイル送信が実現できるようになり、誤送信の不安が低減できました」(林氏)

SPACE PORTERが提供する、宛先の制限やグループ単位の承認者設定、送受信履歴の記録等の機能は、業種を問わず広くファイルのやり取りの統制にご利用いただけます。

コミュニケーションを重視した
素晴らしい職場でスクラム開発を推進

「SPACE PORTERの営業部門は私たち開発チームと同じ事務所にいます。同じ事務所なのでお互い気軽に声をかけやすく、日頃から、お客様からのご要望やご意見を共有しています。コミュニケーションに恵まれた職場で日々、開発を進めています」(林氏)

ICTソリューション開発部 第一課の鎌田七海氏は開発におけるコミュニケーションを重視した職場の魅力を語ります。

「4月からSPACE PORTERの開発チームに入りました。この時からSPACE PORTERの開発にアジャイル型(開発スピードを高める小刻みな開発)のスクラム(ラグビーのスクラムのようにチーム一丸となって開発する手法)が採択されていました」

スクラム手法では、毎朝、開発メンバーとコミュニケーションをとる時間があり、開発がどこまで進んでいるかという進捗や課題の有無を共有し、解決策を定めて成果が最大となるよう開発を進めます。

「スクラムへの参加は今回初めての経験でした。コミュニケーションが密に取れて、問題があって作業が止まっていても、直ぐにメンバーの方に相談ができて、効率の良い開発手法だと実感しています」(鎌田氏)

優先順位の見直しで
柔軟にかつスピーディーにチャレンジ

スクラム手法では、短い期間(たとえば1ヵ月)ごとに状況を見ながら、開発に重要な項目や追加したい機能に優先順位を付けます。そして、開発は優先順位に沿って進めていきます。

「SPACE PORTERは自社サービスのため、お客さんからの反応をダイレクトに感じることができます。スクラム手法では、サービスをどう良くしていくか、お客様の反応からこちらを優先した方がいいよね、といった話し合いが行われます。話し合いの結論を、柔軟にかつスピーディーにチャレンジできるスクラム手法は、SPACE PORTERのように年に数回のバージョンアップを繰り返すサービスにマッチしていると思っています」(鎌田氏)

目指すべきゴールと
お客様要望の両面で開発項目を選定

SPACE PORTERの開発項目はサービスの目指すべきゴールとお客様要望やニーズとの両面から選定しています。項目選定は、すべて自らが判断して選択しているので、成功も失敗もすべて自分たちに跳ね返ってくる難易度の高い業務です。

「お客様からの機能要求があるからといって、その機能を追加しようとすると、全体としてうまくいかないことがあります。要求機能そのものよりも、その機能がどう運用されるのか、そして、本質的な要望は何なのかを見極める必要があります。同時に、SPACE PORTERの戦略に適応しているのかといった判断も開発項目選定の重要なポイントです」(林氏)

様々な意見やニーズを吸い上げて
幅広くお客様の事業拡大に貢献

セキュリティー事業はMESWが注力している事業分野の一つです。特にセキュリティーが重要な金融業を中心に、製造業、エンターテインメント業、サービス業など様々な業界で製品、サービスをご利用いただいています。セキュリティー製品、サービスには数百社の既存顧客がおり、評価や改善点を伺う機会があります。また、個別案件でお付き合いのある官公庁系のお客様との接点も多く、様々な意見やニーズを聴き取り、幅広くお客様の事業拡大に貢献できる点がMESWのセキュリティー事業の強みとなっています。

「今後とも、MESWの強みを活かし、よりお客様のニーズに合致した価値を提供できるようサービスを展開していきます」(林氏)

図1. セキュア大容量ファイル転送サービス SPACE PORTER
図1. セキュア大容量ファイル転送サービス SPACE PORTER

商標について

  • ・SPACE PORTERは、三菱電機ソフトウエア株式会社の登録商標です。