2023年度 三菱電機ソフトウエア技術レポート
(コラム)
ServiceNow を利用した運用サービス
運用サービスで運用情報を一元管理し、
運用情報を改善提案に活用可能にすることで、
循環型デジタル・エンジニアリングに貢献
利用者からの問い合わせや障害情報
など運用情報を一元的に管理し可視化
DXの進展により、企業におけるITの役割はますます重要になっています。しかし、システムやデータの複雑化により、運用管理の負担も増えています。そこで、MESWは2021年10月※から、運用保守業務の効率化を目指した運用サービスを提供しています。
MESWの運用サービスでは、お客様からの問い合わせ、障害連絡、障害対応の内容等、運用に関わる情報を一元管理します。運用サービスを介して運用保守を行うことで、過去の事例参考にした解決等が促進され、運用保守業務の効率化・作業品質の改善が期待されます。運用保守業務の効率化はお客様への回答までの時間が短縮等にもつながるため、顧客満足度が向上にも直結します。
これらの運用情報が運用システム上に一元管理されることは今まで見えにくかった要素の可視化を容易にします。問い合わせ内容やインシデントの状況を分析することで、今まで見えにくかったサービスの強み・弱みを可視化し、そこに対するナレッジの充実や予防保守など、積極的な運用保守を可能にします。
一般的に、運用保守はシステム開発の上流工程と比べて軽視されがちですが、実際にはサービスを提供し続けるためには非常に重要な工程です。運用保守の品質は重要であり、システムの目的であるお客様へのサービス提供を支える役割を果たしています。
MESWの運用サービスのコンセプトは、「運用保守を通じて稼働状況や障害、脆弱性情報、問い合わせ、クレームなどの情報を蓄積し、潜在的な課題やニーズを見つけ出し、新たな価値を提案する『循環型ビジネス』の実現を支援することです」と、ITシステム事業統括部 湘南事業所 ITシステム第三部システム一課の窪寺恒太郎氏は語っています。
※ 2022年4月MESW設立前の統合元会社にて運用サービスを提供
ITIL®に準拠した ServiceNowを活用して構築
MESWの運用サービスは、SaaS型のサービスマネジメントツールである「ServiceNow(サービスナウ)」を使用しています。ServiceNowは、世界的に急成長しているServiceNow社によって開発・提供されているITサービスマネジメントツールです。このツールはITIL®に準拠しており、さまざまな定型業務プロセスを簡素化・自動化することができます。
ServiceNowを採用する最大のメリットは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスである「ITIL®」に準拠していることです。ITIL®は、世界中の企業や官公庁などの運用保守の現場で広く利用されているデファクトスタンダードです。運用保守をITIL®に則って行うことは、企業や団体のアピールやシステムの信頼性につながります。
MESWの運用サービスでは、ServiceNowのカスタマーサービスマネジメントとITサービスマネジメントの機能を活用しています。ServiceNowの機能は、ベストプラクティスに基づいて作成されているため、運用設計を抜け漏れなく進めることができます。これにより、効率的かつ信頼性の高い運用サービスを提供することができます。
「汎用的運用機能」を開発し
運用に向けた導入障壁を低減
「導入実現までの期間やコスト」、「運用サービス用いた運用設計」など、実際にお客様が運用サービス導入いただくためには様々な導入障壁があります。これらの導入障壁を最小限にするため汎用的運用機能を開発しました。
具体的には、ケース(問合せ)管理やインシデント管理、お知らせなどの運用に必要な機能の中で、必要かつ共通となる設定などを汎用化し共通の設定として事前に定義しました。これにより、導入に向けた作業量を削減し、「導入実現までの期間やコスト」の削減を実現しています。
「期間やコストの削減だけでなく、汎用的運用機能はServiceNowの標準フレームワークITIL®のベストプラクティスに則って運用できる基盤が揃っているため、「運用サービス用いた運用設計」もゼロから検討する必要がなく短期間で運用を開始することができます」(窪寺氏)
運用サービス自体の運用コストもお客様の費用負担に直結し、導入障壁となってしまうため、最小限になるよう開発しました。SaaS型のServiceNowは、年に2回のバージョンアップがあり、ITSM基盤としてのサービスを進化させています。バージョンアップ毎にServiceNow標準設定を外れた独自機能は動作確認必要となり、独自機能が多いほど、確認作業時間が増えてしまいます。
そこで、バージョンアップ時の動作確認時間を最小限にするために、ServiceNowの標準設定を用いて汎用的運用機能を実現しています。
「JavaScriptで構築されているServiceNowは、JavaScriptによるコーディングで独自機能としてカスタマイズできますが、サポート外となってしまうため、標準設定内での開発を意識しました。また、独自機能はServiceNowの進化の恩恵が受けられないため、独自機能の開発とならないように注意しています」(窪寺氏)
三菱電機 INFOPRISMプラットフォーム
の運用保守に採用
ServiceNowを利用した運用サービスは、三菱電機 社会システム事業本部のINFOPRISM※プラットフォームの運用保守に採用され、2021年10月から利用が開始されました。
INFOPRISMプラットフォームの運用保守では、アプリ部門からの問い合わせやインシデント内容などの運用情報の共有が必要です。運用サービス導入前は、情報共有のためにメールや電話、Microsoft Teams、Microsoft SharePointなどを使い分けていました。共有方法や共有先の検討に時間と手間がかかるだけでなく、情報が分散してしまうことで全体の運用保守状況を把握するのが難しくなり、運用保守全体がブラックボックス化していました。
そこで、運用サービスでは、ServiceNowを使用して情報を集約し、運用情報の一元管理を実現しました。これにより、問い合わせ対応や障害対応、監視対象システムからのアラートメールなどの情報共有が容易になりました。情報共有が簡単になっただけでなく、一元管理された運用情報を活用して全体の運用状況を可視化することができ、運用保守全体のブラックボックス化を解消しました。
INFOPRISMプラットフォーム運用保守部門の担当者からは、問い合わせなどの情報が一元管理でき、運用改善が必要な箇所が一目で分かるため、運用がシンプルになったと高い評価をいただいています。(窪寺氏)
※ ※ INFOPRISM(インフォプリズム):①データ収集・蓄積・可視化、②AI(機会学習)、③高度なセキュリティを特徴とした、IoT・クラウド技術による各種サービスを提供するための様々な機能を持つ三菱電機の共通プラットフォーム
ナレッジ管理などの機能を拡張しながら
より多くのシステム利用者、運用管理者に価値を提供
今後は、運用サービスの機能を拡張する予定です。具体的には、業務に関する知識やノウハウを共有する「ナレッジ管理」、リリース計画や展開を管理する「リリース管理」、利用者からの要求を迅速かつ確実に実現する「要求管理」、ケースやインシデントの遵守状況を把握する「サービスレベル管理」などの機能をサポートします。これにより、運用保守から循環型デジタル・エンジニアリングに貢献していく予定です。
「ServiceNowによる運用サービスは、開拓余地のある可能性を秘めたサービスです。今後、より多くのシステム利用者や運用管理者に体験していただき、その価値を広めていきます」(窪寺氏)

